クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第172回 ボッケリーニ『メヌエット』
イラスト/なめきみほ
ハイドン&モーツァルトと同時代に活躍したチェロの名手の名旋律
今日2月19日は、イタリアに生まれ、スペインで活躍した作曲家ルイジ・ボッケリーニ(1743~1805)の誕生日です。
26歳の年にあたる1769年、スペイン・マドリードへと渡ったボッケリーニは、その後の人生をスペインで過ごしています。音楽史上最大のチェリストにして、“室内楽の王”と呼ばれた彼は、チェロのための多数の室内楽作品のほか、31曲の交響曲と12曲以上の協奏曲を手がけています。しかしこれらの作品は、19世紀にはほとんど忘れ去られてしまいます。
ところが、1895年にドレスデンのチェリスト、F・グリュツマッハーが『変ロ長調協奏曲』を改訂・編曲して出版。これがきっかけとなって、作曲家ボッケリーニの存在に再び光が当てられたのです。ボッケリーニは、今後さらに再評価の進む作曲家の1人となりそうです。
その彼の代表作として有名な作品が“ボッケリーニのメヌエット”の愛称で知られる『弦楽五重奏曲ホ長調G275』の第3楽章です。優雅なメロディは、同時代の作曲家ハイドンとの対比で「ハイドン夫人」と呼ばれることもあるようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。