クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第175回 伝ロッシーニ『猫の二重唱』
イラスト/なめきみほ
猫好きにはぜひ聴いてほしい珍名曲!?
今日2月22日は、猫の日です。猫にまつわる作品といえば、ドメニコ・スカルラッティ(1685~1757)の『ソナタト短調 K30』が有名です。
マリア・バルバラ王妃にあてたスカルラッティの手紙には、「一匹の猫が私の部屋の窓枠に飛びあがり、チェンバロの上に飛び乗ると優雅に鍵盤の上を歩き始めたのです。私はそのメロディに飛びついた結果、完成した曲を『猫のフーガ』と名づけたしだいです」と書かれています。
さらには、「もしも猫がワルツを踊るなら」というテーマで作曲されたルロイ・アンダーソン(1908~75)の『ワルツィング・キャット』も秀逸です。さまざまな楽器によって猫の鳴き声や動きを表現した音楽は楽しさ満載。最後に犬に吠えられるのもご愛嬌です。
一方、ロッシーニ(1792~1868)作と伝えられていた『猫の二重唱』は、イギリスの作曲家ピアソルが、既存の3つの曲をつなぎ合わせた作品であることが近年判明。とはいえ、猫の鳴き声だけで描かれる音楽の楽しさは格別です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。