クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第176回 ヘンデル『王宮の花火の音楽』
イラスト/なめきみほ
花火のためのBGMとして作られた大傑作
今日2月23日は、バロック時代を代表する作曲家ヘンデル(1685~1759)の誕生日です。
J・S・バッハ(1685~1750)と同じ1685年、ドイツに生まれたヘンデルは、終生ドイツを離れなかったバッハとは対照的に、若い頃からイタリアなどで活躍した後、イギリスの市民権を得ています。後年はロンドンで過ごしながら、数多くのオペラやオラトリオを作曲した“国際派”の先駆けといえる存在です。
そのヘンデルの代表作『王宮の花火の音楽』は、「オーストリア継承戦争」の終結を記念して、イギリス王室が計画したロンドンでの大がかりな花火のショーのためにヘンデルが書き上げた名曲です。
1749年4月21日に行われた公開リハーサルは大成功。1万2000人の観客が集まり、交通渋滞を引き起こしたのだとか。そして迎えた4月28日の本番では、花火が思うように点火せず、なんとも悲惨な状況だったという記録が残っていますが、軍楽隊が演奏したヘンデルの音楽は、見事に人々の心をとらえたそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。