クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第180回 ピアソラ『ブエノスアイレスの四季』
イラスト/なめきみほ
北半球と南半球それぞれの「四季」を味わう
今日2月27日は、ラトビア出身のヴァイオリニスト、ギドン・クレーメル(1947~)の誕生日です。
1970年に行われた第4回「チャイコフスキー国際コンクール」ヴァイオリン部門での優勝を機に西側デビューを果たしたクレーメルは、持ち前の強烈な個性によって音楽界を席巻します。
その彼の業績の1つが、伝統的なタンゴに、ジャズのリズムやクラシックの要素を取りいれつつ、独自のスタイルを生み出したアルゼンチンの作曲家アストル・ピアソラ(1921~92)の魅力を世に知らしめたことでしょう。
中でも、ピアソラの『ブエノスアイレスの四季』と、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集『四季』をカップリングしたアルバムの面白さは抜群です。ピアソラの『四季』は、春夏秋冬の4曲が「連作」として作曲されたものではありませんが、ヨーロッパとは真逆の南半球の「四季」を描いた躍動感あふれる名作です。今ではさまざまなアレンジが施され、世界中で演奏されるスタンダードな名曲の1つとなっています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。