クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第182回 ロッシーニ オペラ『ウィリアム・テル』序曲
イラスト/なめきみほ
料理にもその名を残す大作曲家
今日2月29日は、イタリアのオペラ作曲家ロッシーニ(1792~1868)の誕生日です。
10代で作曲家デビューを果たし、その後20年ほどの間に39作のオペラを作曲したロッシーニは、当時のヨーロッパを席巻した超人気作曲家でした。その勢いは音楽の中心地ウィーンをも席巻。影響を恐れたベートーヴェン(1770~1827)が、あの『第九』の初演をほかの街に変更しようと考えたという逸話が残るほどの人気ぶりだったのです。
そのロッシーニは、人気絶頂のさなかに書き上げたオペラ『ウィリアム・テル』を最後に37歳でオペラ界から引退。その後の40年弱にも及ぶ後半生は、サロン経営や料理研究などをしながら優雅に過ごしたというのですから変わっています。
レストランで目にする「ロッシーニ風」という牛フィレ肉にフォアグラを重ねたゴージャスなレシピは、料理研究家たるロッシーニの考案。何をやっても超一流の男だったことは間違いないようです。
最後に手がけたオペラ『ウィリアム・テル』序曲の、軽快で親しみやすいメロディこそがロッシーニの真骨頂だといえるでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。