サイレントキラーの病に備える 第2回(2) 静かに体を蝕み、進行すると命にかかわるサイレントキラー。第2回は全身に影響し、死亡リスクを高める「骨粗しょう症」です。山陰労災病院副院長・リハビリテーション科の萩野 浩先生(日本骨粗鬆症学会理事長)に骨粗しょう症の怖さや予防、検診などについて伺います。
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サイレントキラーの病に備える「骨粗しょう症」
[お話を伺った方]萩野 浩先生山陰労災病院 副院長 リハビリテーション科
萩野 浩先生
はぎの・ひろし 1982年鳥取大学医学部卒業。同附属病院整形外科での研修後、松江整肢学園等を経て同大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。米国クレイトン大学骨粗鬆症センター留学から帰国後、鳥取大学医学部で整形外科講師、附属病院リハビリテーション部部長、保健学科教授を歴任。2023年4月から現職。日本骨粗鬆症学会理事長。
突然の骨折で死亡リスクを上げてしまう「骨粗しょう症」。検診などで定期的に骨密度を測定する
骨粗しょう症のリスク要因は次のとおりです。まずは加齢。食が細って骨の原料となるたんぱく質やカルシウム、腸管でのカルシウムの吸収を促進するビタミンD、骨の吸収を抑え、同時に形成を促すビタミンKの摂取量が減少し、さらに腸管での吸収も落ちます。また、運動量も少なくなります。特に破骨細胞の働きを抑制するエストロゲンが減る閉経前後からは要注意です。
やはり遺伝の影響があり、親が骨折したことがある人は、ない人に比べ、骨折リスクが2〜3倍に上昇します。
骨芽細胞の働きを抑える大量飲酒、血流を妨げ、骨の質を下げる喫煙は避けたいものです。また、ステロイドや乳がん治療に使うアロマターゼ阻害薬は骨粗しょう症を進行させることがわかっています。糖尿病や慢性腎臓病(CKD)、甲状腺機能亢進症、関節リウマチなどの病気も原因になります。
予防には、たんぱく質やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを含む食品を積極的に摂ることです。ビタミンDは皮膚に紫外線が当たることでも作られるため、外歩きも大切です。
骨は重力をかけることで硬くなります。その場でのジャンプ、しこ踏み、ウォーキングといった運動が役立ちます。片脚立ち、スクワット、太極拳のようなバランスを必要とする運動も取り入れましょう。「いずれにしても転倒に注意してください。水泳やエアロバイクのような運動は重力はかかりませんが、筋力を鍛える効果があります。膝や腰が痛む人にはおすすめです」。適度な体重を保つことも重要です。
骨粗しょう症のリスク要因
●加齢
●閉経した、あるいは閉経が近づいている
●卵巣を摘出した
●これまでに骨折した経験がある
●親が大腿骨近位部骨折を経験している
●運動不足である
●喫煙している
●毎日、アルコール換算で3単位以上の飲酒をする
・ビール コップ(285ml)3杯以上
・日本酒1.5合(270ml)以上
・ウイスキー シングル3杯(90ml)以上
●ステロイド(副腎皮質ホルモン)を3か月以上服用している
●慢性腎臓病(CKD)である
●糖尿病である
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)である
●甲状腺機能亢進症である
●乳がんの治療を受けている
●関節リウマチである
●胃腸の病気で切除手術を受けた