検診や人間ドックで骨密度を測定しておく
40〜90歳なら、世界保健機関(WHO)の国際共同研究グループが開発したプログラムFRAX®で、骨粗しょう症に関連する12の因子についてウェブ上で入力すると向こう10年間の骨折の発生率を推測できます(大腿骨近位部の骨密度測定値が不明な場合は入力せずに進めます)。発生率が10パーセント(64歳以下は5パーセント)を超えたら、整形外科などで骨密度測定を受けましょう。
自治体検診では40歳から5歳刻みで問診や骨密度測定が受けられます。
「“異常なし”であれば5年後に検診を受ければよいと思います。“要指導”であれば食事などの指導を受け、人間ドックなどで1年ほどの間隔で骨密度を調べるといいでしょう」。
“要精検”なら整形外科を受診し、より精密な腰椎や大腿骨近位部のX線撮影を受けます。骨密度測定は人間ドックのオプションにもあります。
診断基準は
下記のとおりです。
従来の飲み薬が重症度に応じて処方され、副甲状腺ホルモンの自己注射薬などの新薬も登場しました。ただ、薬だけで劇的に改善はせず、栄養、運動なども見直す必要があります。
「ある日突然の骨折で骨粗しょう症になっていたことを知る女性が多いのです」と萩野先生。「予防と早期発見が重要です。もし転倒などで骨折した経験があるなら、その治療後にも骨粗しょう症の有無を調べるなど継続的にチェックしていただきたいと思います」。
●予防
・適度に運動する(その場ジャンプ、ウォーキング、筋力トレーニングなど)
・たんぱく質、カルシウム、ビタミンD 、ビタミンKを含む食品を積極的に摂る
・過激なダイエットをしない
・禁煙する
・大量の飲酒をしない
・糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病(CKD)を予防する
●自分で骨折リスクを評価
骨折リスク評価ツール(FRAX®)
ウェブ上で入力すると向こう10年間の骨粗しょう症による骨折リスクを推測できる。
FRAX®日本語版計算ツールを紹介する骨粗鬆症財団リーフレットにアクセスを
●検診
40~70歳の女性は、5歳刻みの自治体検診を受ける
→初期には自覚症状はほぼない
生活習慣、病歴、月経などについての問診、骨密度測定を受け、20〜44歳の若年成⼈の骨密度の平均値(YAM)を100パーセントとした場合の値を知る
→「要精検」と判定されたら、必ず再検査を! ●健康診断・人間ドック
オプションで骨密度測定を受けられることがある
●ほかの病気の診察時
糖尿病、COPD、CKD 、甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、乳がんなどの治療中に、骨粗しょう症について担当医に相談する。場合によっては整形外科に紹介してもらう
●診断
骨粗しょう症の診断基準
→身長が低くなった、背中が曲がってきたと感じたら、整形外科に相談を
(1)骨がもろくなることによる骨折をした(1)-1 背骨の骨折、大腿骨近位部骨折をした
※背骨の骨折は自覚症状がない場合もある
(1)-2 その他の部位を骨折したうえ、腰椎または大腿骨近位部の骨密度がYAMの80パーセント未満
→転倒して手首などを骨折した場合には、骨粗しょう症の検査を受ける(2)骨がもろくなることによる骨折はしていない腰椎または大腿骨近位部の骨密度がYAMの70パーセント以下または−2.5SD以下
進行してから出る症状
大腿骨近位部骨折(寝たきりの原因に)
脊椎骨折(脊柱の変形・姿勢の異常から逆流性食道炎や心肺機能の低下につながる)
その他の部位の骨折
※痛み、動けないなどによって
日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が大幅に低下し、死亡リスクが上がる
●治療
薬物療法軽度:活性型ビタミンD3 、選択的エストロゲン受容体モジュレーターなど
中等度:ビスホスホネート薬、抗RANKL抗体薬など
重度:副甲状腺ホルモン薬、抗スクレロスチン抗体薬など
食事の改善たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを摂る
運動療法重力がかかる運動、バランス訓練、筋力トレーニング
→運動は転倒しないように気をつけて行う。バランス訓練を取り入れる
骨折した場合は手術とリハビリテーション骨粗しょう症を起こす、ほかの病気の治療糖尿病、COPD、CKD、甲状腺機能亢進症、関節リウマチなど
●日本骨粗鬆症学会 認定医リスト・連載「サイレントキラーの病に備える」の記事一覧はこちら>>>