〔特集〕挑戦し続ける名宿 最上級の温泉宿 コロナ禍という試練を経て、日本の名宿が、原点を見つめ直し、新しい時代の新しい高級旅館の有り様を提示しつつあります。守りに入らず攻め続ける、名宿の覚悟と挑戦から、今後のラグジュアリー温泉宿の潮流を探ります。
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那須別邸 回 (栃木・那須温泉)
土地の魅力をモダンなデザインで届ける
小川のせせらぎを楽しむ「離れ」の露天風呂
床やテラスの柵などを改装。一面に広がる木々の匂いや、頰を刺すような冷気、小川の流れる音など自然の息吹を全身で感じられる。
レストラン棟の新設と客室棟の増築改修
大正15年に御用邸が建てられてから、別荘地として多くの人に親しまれている那須温泉。昭和初期から那須で温泉宿を営む「山水閣」による「那須別邸 回」が1年半のクローズ期間を経て、2023年10月にリニューアルオープンしました。
レストラン棟に設けたレセプションルーム。那須在住の雅楽奏者・石田多朗さんによる音楽がBGMとして緩やかに流れる。
新規客室「其の九」の半露天風呂。とろみのある源泉かけ流しの湯には、化粧水にも使用されるメタケイ酸という天然の保湿成分が豊富に含まれる。体も心も穏やかにほどける時間に。格子窓から覗く、四季折々の自然を感じながら湯浴みを。
「那須の底力を詰め込んだショーケースにしたい」 片岡孝夫さん(那須別邸 回主人)今回の改装では、新たにレセプションルームとレストラン棟を設置し、客室を2室増築。さらに、2室の全面改築、その他6室の改修を行いました。リニューアルするうえでのコンセプトは「那須をさりげなく表現する」こと。那須出身、那須育ちの主人、片岡孝夫さんは「“那須の地から生えてきたような”宿にしたい」と語ります。
合計約120平方メートルの広さを誇る「離れ」のリビングと和室。最大6人が宿泊できる。床暖房もリニューアルで完備。
キッチンに併設するダイニング。そのほかに、デスクが備えられたベッドルームも。別荘でくつろぐようなゆったりとした時間を過ごせる。
例えば、全面改築した「離れ」は、創建当初の昭和から残る数寄屋造りの屋根はそのまま、モダンなテイストを取り入れた端正なスタイルに再構築されました。
和洋のインテリアにもなじむ烏山和紙を用いた障子や、栃木レザー製の特注ソファ、那須町で採れた芦野石をテーブルの台座やキッチンに採用するなど、細部に那須の命が宿ります。洗練されていながら、どこかほっとするくつろぎの空間になっています。
レストラン中央にしつらえた炉。料理長高久和郎さんは火おこしから行う。春から秋には、那珂川で取れた鮎が並ぶ。
手前「那須黒毛和牛のフィレステーキ」。奥は、地元の山椒や黒キャベツのソテーを付け合わせにした「真鴨の炭火焼き」。
また、レストラン棟の完成に伴い、食事も部屋食からレストランに移行し、献立も一新。スタイリッシュにしつらえられた迫力満点の焼き場で、地元の鮎などを炭火焼きで提供します。
地元農場「こたろうファーム」で採れた旬の野菜は朝食で楽しめる。
「那須の素材を最大限に生かし、土地の滋味を那須を訪れた方に伝えていくことが、宿の使命だと思っています」。生まれ変わった「土着の宿」の進化は続きます。
客室棟を背景に立つ、スタッフの皆さん。
那須別邸 回住所:栃木県那須郡那須町湯本206
TEL:0287(76)3180
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名5万2950円~、ご紹介した「其の九」は同5万7350円~、「離れ」は同9万6950円~(すべてサービス料込み)
全10室 IN15時/OUT11時
(次回へ続く。
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