〔特集〕挑戦し続ける名宿 最上級の温泉宿 コロナ禍という試練を経て、日本の名宿が、原点を見つめ直し、新しい時代の新しい高級旅館の有り様を提示しつつあります。守りに入らず攻め続ける、名宿の覚悟と挑戦から、今後のラグジュアリー温泉宿の潮流を探ります。
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界 由布院(大分 由布院温泉)
山あいの原風景の懐でくつろぐ
土地の魅力を体感できる大浴場からの美しい眺め
大浴場の露天風呂から見えるのは、棚田を模した庭と由布岳、そして空のみ。浴槽内に一段高くなっている寝湯が設けられており、そこに寝転べば夜には満天の星が一面に広がる。
「イメージしたのは上質な農家の奥座敷」 隈 研吾さん(建築家)温泉の湧出量、源泉数ともに日本一のおんせん県・大分県にあり、その美しい山容から“豊後(ぶんご)富士”とも呼ばれる由布岳の麓に広がる温泉郷、由布院。その中心地から少し離れた小高い丘の上に2022年8月、「界 由布院」がオープンしました。
竹を敷き詰めたフロント棟の外観。
農家の土間をイメージしたというフロント。椅子などは羽釜がモチーフ。
大浴場の内風呂からの景色。温度が異なるぬる湯とあつ湯の2つの浴槽があり、温泉に浸かりながら雄大な由布岳を眺めることができる。
「界 阿蘇」、「界 別府」に続いて県内3施設目となる同宿の設計、デザインを手がけたのは、日本を代表する建築家の隈 研吾氏です。かつて実際に稲作が行われていたという棚田の地形を生かし、7年もの歳月をかけて山あいの原風景を再現。季節ごとに刻々と変化する棚田を一望できます。
稲架(はさ)掛けをしている棚田の様子。地元の農家の方の協力のもと、毎年米を栽培、収穫している。
その景色に合わせて、“棚田暦で憩う宿”をコンセプトに、名産品の竹をあしらった什器や、国東半島で栽培される七島藺(しちとうい)の畳を配し、どこか懐かしくも感じる空間が作り上げられました。
藁(わら)をより合わせる農閑期の手仕事“わら綯(な)い”のアクティビティで、棚田の原風景のもと、暮らしや文化の片鱗も体験できます。
「蛍かごの間(くぬぎ離れ)」のベッド、リビングルーム。竹や畳の優しい香りが広がる。
湯船とデッキチェアが置かれている「湯小屋」。
全45室のうち、客室でも温泉を堪能できるのが、3室のみの離れ「蛍かごの間(くぬぎ離れ)」です。原林を前にした「湯小屋」があり、化粧水などにも使われる保湿成分、メタケイ酸を豊富に含んだ柔らかな湯に心ゆくまで浸かることができます。
夕食の特別会席「山のももんじ鍋会席」では、穴熊、猪、鹿、牛をすっぽんのだしのしゃぶしゃぶで味わう。
名品であるジャンボしいたけをはじめとした地元の野菜を七輪焼きで楽しむ「ご当地朝食」。和食では郷土料理のだんご汁も。
温泉の後は縁側で涼んだり、虫の声を聞きながらくつろいだり......。四季折々の自然の営みを五感で楽しみながら、身も心もほぐれる癒やしのひとときを過ごせるはずです。
界 由布院住所:大分県由布市湯布院町川上398
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名3万5000円~、ご紹介した「蛍かごの間(くぬぎ離れ)」は同5万5000円~(夕食を「特別会席」に変更の場合は5000円、ともにサービス料込み)。
全45室 IN15時/OUT12時
(次回へ続く。
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