自分の眼で花器を選び、使いながら花器を育ててゆく
語り/小林 厚今回、雲南木蓮を入れる際、古い信楽の花器を使用しました。時代を経た土ものは落ち着きますね。土ものの場合は完品でなくても少し欠けているようなものが好まれます。欠落の美といいましょうか、風情のあるものです。
この信楽は割れ目が継いであって、その景色や信楽焼独特の土味などもよい。懐が深いというか、大地と繫がっている感覚があり、花を入れるにはとてもよいのです。僕は雲南木蓮には、古い信楽か伊賀がよいと直感的に思いました。
戸田さんとも親しい京都の樂美術館で使われていた竹花入。毎年、年末に新しい竹に替えるため、使い込んだものをいただいたという。堂々たる清巌宗渭(せいがんそうい)の墨跡に、クリスマスローズと熊笹が映える。
しかし、花器も古ければよいというわけではありません。たとえば上の写真の竹花入は、最近まで京都の樂美術館で使われていたものです。毎年、年初に美術館の入り口に新しい竹の花入を置き、一年間ずっとその竹花入に季節の花を入れているのだそうですが、日々水を替えたり、花を入れるたびに竹を布で拭ったり、手の脂をつけて磨いたりしていると聞きました。
新しい器でもこんなに魅力的な花入になる。人と花器がともに過ごした濃密な時間がそのままのかたちになって現れています。
端正な砂張花入に入る白椿に春の訪れを感じさせる裏白の若芽を添えて白玉椿、裏白の若芽
唐物砂張桃底花入
清巌宗渭の墨跡を掛けた床の間に古典的な唐物花入を合わせ、椿を入れた例。椿には木のものを合わすことが多いが、ここでは可愛らしい裏白の若芽を添えている。
茶花上手の近道は日常にあり暮らしの空間の中で、土ものの花入一つととことんつきあってみる
日常使いの花器を一つ手に入れるなら、まずは土ものの花入がおすすめ。焼きものでも磁器、焼きもの以外でもたとえば砂張(さはり)や籠花入などは、合う花の選択肢が狭まるという。
上写真のような土ものの小ぶりの壺や筒型の花入などは、花の種類を選ばず、日常空間のいろいろな場所で使えて便利。