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鍼を刺さない「接触鍼法」を中心に鍼治療を行う、山本和臣先生(経和堂鍼灸接骨院)

2024.02.21

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新世代の鍼灸師に訊く 第3回(1) 鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「冷え・血行不良」

山本和臣先生(経和堂鍼灸接骨院)

山本和臣先生

経和堂鍼灸接骨院 院長 山本和臣(やまもと・かずおみ)先生
1980年、東京都生まれ。日本健康医療専門学校にて鍼灸師・柔道整復師の資格を取得。接骨院・整形外科での研修・勤務を経た後、鍼灸治療の奥深さに目覚め、経絡治療家に3年間師事する。2012年に経和堂鍼灸接骨院を開業。鍼で皮膚を刺激する「接触鍼法」と、程よい温かさの「知熱灸」などを自在に組み合わせ、さまざまな症状や病気に対応している。東方会副会長、日本伝統鍼灸学会理事。

鍼で皮膚を刺激して気の流れを動かし、 お灸で血(けつ)の巡りをよくして冷えをとる

経和堂鍼灸接骨院の山本和臣先生は、経絡治療学会の勉強会に参加したことで鍼灸の奥深さに目覚めたといいます。

「たまたま風邪をひいていて、そのことを講師に伝えると、それならばぜひ治療をしましょうと。鍼灸師でありながら、本当に効果があるのか半信半疑で施術を受けたところ、しばらくすると汗をかき始め、呼吸が楽になってきて風邪が治ってきている実感を得られたのです」。

この体験をきっかけに山本先生は経絡治療の修業を始め、現在は東方会方式の「接触鍼法」といわれる手技を中心とした鍼治療に取り組んでいます。


※経絡とはエネルギーが流れる通路のことで、全身に12本の特性を持った流れがある。

鍼を刺さない「接触鍼法」は鍼が怖い人も安心して試せる

接触鍼法とは、鍼を刺さずに皮膚の表面を刺激して気を動かす手法です。やわらかく気持ちのよい鍼刺激で全身の緊張をほぐしていきます。

「接触鍼法は人に与える刺激量が少ないので、その人の状態に合わせてちょうどよい刺激量を調節できるのが利点です。赤ちゃんや体力のない高齢者にも安心して行え、がん患者さんの緩和ケアにも取り入れられています。また、鍼を刺す痛みがなく、鍼が怖いという人にもおすすめです」。

山本先生はお灸も積極的に活用しています。やけどしたり灸痕が残ったりするような熱いお灸は行わず、「知熱灸」と呼ばれる程よい温かさのお灸がメインです。症状や体の状態に合わせて鍼の先に球状のお灸をつけて燃やす「灸頭鍼」や米粒よりも小さい「透熱灸」を使うこともあります。

小指の先くらいの大きさの知熱灸は熱さを感じる程度で取り除く。

小指の先くらいの大きさの知熱灸は熱さを感じる程度で取り除く。

左から知熱灸、長柄鍼、刺さない種類の鍼である円鍼、打鍼。鍼の材質にもこだわり、皮膚へのタッチがやわらかく気を動かしやすいとされる銀製や金製の鍼を使う。

左から知熱灸、長柄鍼、刺さない種類の鍼である円鍼、打鍼。鍼の材質にもこだわり、皮膚へのタッチがやわらかく気を動かしやすいとされる銀製や金製の鍼を使う。

「東洋医学では体の基本となる気と血(けつ)の巡りが悪くなり、全体のバランスが崩れることによって病的な状態が引き起こされると考えられています。この状態を改善するのにさまざまなアプローチ法がありますが、私は“鍼で気を動かし、お灸で血を動かす”という考え方に基づいて、さまざまな症状や疾病に対して鍼灸治療を施しています」

今号のテーマである冷えや血行不良の治療も基本的なアプローチは同じです。ただし、治療に使う経絡(けいらく)やツボは、気血の巡りや五臓(肝・心・脾・肺・腎)の状態、陰陽のバランスなどによって違います。そのため、山本先生は東洋医学の診断法の一つである脈診を主に用いて原因を探っていきます。

おなかの動きが悪いときに打鍼を行い、気血の流れが滞っている状態を改善する。

おなかの動きが悪いときに打鍼を行い、気血の流れが滞っている状態を改善する。

冷えのタイプに応じて経絡やツボを使い分けて改善に導く

「更年期の女性に多いのは、上半身はのぼせていて下半身が冷えているタイプです。加齢とともに腎が衰えることで、このような冷えが起こるため、鍼治療で腎を補い、気の巡りをよくします。また、足裏にある腎のツボ・湧泉(ゆうせん)などにお灸を施し、上半身ののぼせた気を下げていきます。冷えている下半身は滞りが強く、気を動かすだけでは解消できないこともあります。その際には腰やお尻に灸頭鍼を行い、深い部分の血の滞りにアプローチします」

一方、全身が冷えている人は虚弱体質などで気血の量そのものが少ないため、冷えやすいと考えられています。「このタイプは経絡の肺経と脾経を中心に施術します。治療の刺激が強いと体がだるくなるので接触鍼や知熱灸のような刺激量の少ない治療を行うのがポイントです」。

東洋医学では、寒邪(かんじゃ)(過剰な寒)や湿邪(しつじゃ)(過剰な湿)が体に入り込むのも冷えの大敵とされており、これらの邪気を体から追い払うような施術を行い、全身を温めることもあります。

柔道整復師である妻の優さんと夫婦2人で営む。整体も自費診療で実施。「どの治療も心地よくリラックスしていただける施術を目指しています」。

柔道整復師である妻の優さんと夫婦2人で営む。整体も自費診療で実施。「どの治療も心地よくリラックスしていただける施術を目指しています」。

「鍼灸治療を続けることで、冷えをはじめとする自分の体調不良に早めに気づけるようになります。私たち鍼灸師は治療を通して、その人の体質的な弱点を補う養生法も提案するため、未病の段階で養生に取り組めるのも大きなメリットです。冷えのように病院に行くほどではないけれど、つらいから何とかしたいという症状がある場合は鍼灸院を活用し、健康管理にお役立てください」

診療案内

東京都文京区根津2-29-2
TEL:03(5809)0741 要予約
受付時間/月曜~金曜10時~13時
月曜・水曜・木曜・金曜15時~20時
土曜 10時~17時
休診日/日曜、祝日、火曜午後
診療費/初診料2000円(税込み)
鍼灸治療6500円(税込み)
http://www.keiwado.com/

経和堂鍼灸接骨院
※次回へ続く。

・連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年03月号

家庭画報 2024年03月号

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/渡辺千鶴

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