帯で着分ける大島紬
前ページの大島紬に、染め帯を合わせるだけで優しい印象に。
ひと言で大島紬といっても、色や織り出された柄ゆきによって印象はさまざま。
昨年、
連載の冒頭でご紹介したような産地の風土を映した古典的な意匠は、紬らしく染め帯で楽しむスタイルがしっくりときます。一方で現代的なデザインや小紋柄のような雰囲気の大島紬なら、合わせる帯によってぐっと着こなしの幅が広がります。
そこで今月は、お母さまから譲られた簞笥にあふれていた大島紬を、印象の異なる帯でシーンを着分けるご提案です。まとう紬や帯の雰囲気によって、阿川さんの表情までも変わる様子をご覧ください。
昨年ご紹介した精緻な網代 (あじろ)文様の地に、リズミカルな花丸文が舞う古典的な泥大島。畳紙に「佐和子が生まれた年に」と記されていた遠い思い出の品に心を寄せて。撮影/伊藤彰紀(aosora)
銀座もとじで、“師匠ダンフミ”のすすめで誂えたモダンな大島紬。左・鋸歯文様の袋帯は、パーティでもきりりとした印象に映ります。右・鳥の子色の染め帯でワントーンに装えば、春らしい優しい雰囲気に。洋館のサンルームで表情まで和らぐよう。
カイドウを描いた染め帯は、こちらも“師匠ダンフミ”のすすめによって、銀座きしやで求めたそうです。
お母さまの簞笥に眠っていた、総柄の小紋のように花模様を全体に織り出したエレガントな一枚。左・相良刺繍の袋帯で上品さを宿したら、日本庭園を愛でる昼膳の席にふさわしい装いに。右・甘やかな紅型の染め帯を締めたら、オープンテラスのカフェで会話に花を咲かせて。
阿川佐和子(あがわ・さわこ)
©Akinori Ito
作家・エッセイスト 1953年東京生まれ。大学卒業後、テレビ番組でのリポーターを機に、報道番組でのキャスターや司会を務める。映画やドラマに出演するなど女優としても活躍。『週刊文春』(文藝春秋)では対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」を、『婦人公論』(中央公論新社)、『波』(新潮社)他では多くのエッセイを連載。テレビ朝日系列『ビートたけしのTVタックル』にレギュラー出演中。『話す力 心をつかむ44のヒント』(文春新書)他、著書多数。