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雛に出会う春紀行。旧大名・毛利家に受け継がれる次郎左衛門雛を訪ねて

2024.02.26

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〔特集〕母と娘で訪ねたい 雛に出合う春紀行 前編 うららかな春陽のもとでの雛祭り、今年は雛人形に出合う旅はいかがでしょうか。旧長州藩主毛利家伝来の雛を飾る「毛利博物館」、埼玉の邸宅に雛が集まる「遠山記念館」と、2館の歴史あるお雛様を訪ねました。

旧大名・毛利家に受け継がれる次郎左衛門雛を訪ねて

山口県・防府(ほうふ)の毛利博物館の付書院に飾られた次郎左衛門雛。上は28代毛利斉広公令室・和姫様所用。下は江戸期の人形(一般公開では書院には飾られません)。

代々の姫様が愛した雛人形と雛道具/毛利博物館(山口県防府市)

日本三天神の一つ、防府天満宮のある防府(ほうふ)に位置する「毛利博物館」は、雪舟筆四季山水図長巻をはじめ約2万点に及ぶ文化遺産の宝庫です。多々良山の南麓に豪壮な毛利家の本邸が建ち、毎年春には毛利家の姫君たちが慈しんできた館蔵の雛人形や雛道具が順次公開されます。

雛人形はお輿入れの想いがこもったもの。大名家にとって婚姻は重要な意味を持ち、雛人形を受け継ぐということは、家を守り、継承することに通じます。

江戸時代後期の当主・毛利斉広公令室の和姫様所用と伝えられる次郎左衛門雛(上写真)は、幕府の御用を勤めた人形師・雛屋次郎左衛門の創案と伝えられ、18世紀後半に大流行しました。まん丸のお顔に細い目と小さな鼻、あどけないお顔立ちのお雛様です。


また大名家の婚姻では嫁入り道具も豪奢な品々が用意され、それに伴い婚礼道具の雛型としての雛道具を持参するのが決まりでした。

黒塗菊菱唐竹文蒔絵書棚、黒棚、厨子棚の三棚は、隅々まで細工が見事。御簾(みす)屛風も同品。こちらも、幕末の藩主29代敬親公にお輿入れになった都美姫様の品。

三棚をはじめ簞笥、行器(ほかい)、女乗物(輿)、化粧道具やお歯黒道具、手水用具や文房具、さらに茶道具や香道具、振袖などを加えた総点数は百数十点にも及ぶ華麗なものです。

黒塗菊菱唐竹文舞楽道具、三味線、琴、胡弓など。精巧な楽器類は音を奏でることができる。

幕末の鮮やかな品。黒塗菊菱唐竹文蒔絵貝桶と合貝、緋羅紗製紋入り覆い袋。

黒塗唐草文沢瀉(おもだか)紋散蒔絵女乗物(輿)、薙刀(なぎなた)と傘、その前に長持2つ。29代目毛利敬親公の奥方であった都美姫様のものと伝えられている。後ろの襖の文様は家紋である「抱き沢瀉」を意匠化したもの。

写実的で美しい容貌の古今雛は31代元昭公に三條家よりお輿入れになった毛利美佐子様の品。

広大な庭園から見た客殿の書院。毛利家本邸は大正5年に完成した。

毛利博物館
住所:山口県防府市多々良1-15-1
TEL:0835(22)0001
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:12月22日〜31日

●毛利家の雛まつり
会期:2024年2月3日(土)~ 4月7日(日)
料金:700円

(後編へ続く。)

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年03月号

家庭画報 2024年03月号

撮影/三笘正勝 取材・文/萬 眞智子 ※この記事は『家庭画報』2007年3月号「雛を愛でる春紀行」を再編集したものです。写真は現在と異なる場合があります。

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