クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第184回 スメタナ 連作交響詩『わが祖国』より『モルダウ』
イラスト/なめきみほ
チェコ独立の象徴として愛される名旋律
今日3月2日は、チェコの作曲家スメタナ(1824~84)の誕生日です。2024年に生誕200年を迎えるスメタナは、“チェコ近代音楽の父”と呼ばれる偉大な存在です。
当時はまだオーストリア領だったボヘミア南東部の町に生まれたスメタナは、1843年にプラハでピアノを学び、音楽教師をしながら作曲活動を続けた苦労人でした。代表作であるオペラ『売られた花嫁』で大成功を収めながら、50歳を過ぎた頃から耳の病気が悪化。精神的にも不安定となっていきます。
そんな中で作曲された連作交響詩『わが祖国』は、まさにスメタナの祖国愛の賜物です。祖国チェコの独立を望む“象徴”として誕生したこの作品は、今もスメタナの命日に開催される音楽祭「プラハの春」の初日に必ず演奏されるチェコの国民的名曲となっています。
中でも名高い『モルダウ』は、コンサートでも単独で演奏されることの多い名曲です。近年では、ドイツ語の「モルダウ」ではなく、チェコ語の「ブルタヴァ」と呼ばれることが多いようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。