クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第186回 ヴィヴァルディ『2本のトランペットのための協奏曲』
イラスト/なめきみほ
ヴェネツィアの青空を思わせる華やかな調べ
今日3月4日は、バロック時代を代表する作曲家、ヴィヴァルディ(1678~1741)の誕生日です。
イタリアのヴェネツィア、サンマルコ大聖堂の所属楽団ヴァイオリニストの父のもとに生まれたヴィヴァルディは、同地の「ピエタ女子養育院」に司祭として勤務。赤毛だったことから「レッド・プリースト(赤毛の司祭)」と呼ばれていました。その勤務ぶりは、聖職よりも女生徒たちに音楽を教えることに熱心だったと伝えられ、養育院合奏団のために書いた数多くの協奏曲を含め、生涯に450曲以上の協奏曲を残しています。
その1つが、クラシック史上最大のヒット曲の1つとしても知られる、ヴァイオリン協奏曲集『四季』です。多数の協奏曲を残したヴィヴァルディですが、2本のトランペットのために書かれた作品は1曲のみ。しかしその出来栄えはすばらしく、輝かしい響きに魅せられた多くのトランペット奏者たちが競って録音を残しています。
特徴は、1人2人役での多重録音を駆使したアルバムの存在です。ヴェネツィアの青空を思わせる華やかさは、まさにヴィヴァルディの真骨頂といえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。