クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第193回 ヴェルディ オペラ『リゴレット』
イラスト/なめきみほ
娘を持つ父親にとって、やるせない物語を描いた傑作オペラ
今日3月11日は、イタリアのオペラ作曲家ヴェルディ(1813~1901)のオペラ『リゴレット』の初演日です。
『ナブッコ』『椿姫』『アイーダ』など、数々の名作を生み出し、“オペラ王"と呼ばれるヴェルディは、イタリア・オペラに変革をもたらしたのみならず、イタリア史上最も重要な人物の1人とされる偉人です。
その偉業の1つが、「音楽家のための憩いの家」の創設でしょう。これは、音楽仲間の恵まれない最期を憂いた晩年のヴェルディが、私財を投じて建設した音楽家のための老人ホームです。ここには現在も多くの老演奏家たちが住んでいるほか、彼らに教えを請うために音大生たちが通うことによって、館内が、音楽を愛する者のための空間といった趣に満ちているところが素敵です。
そのヴェルディが残した中期の傑作『リゴレット』は、プレイボーイに娘を奪われた父親の葛藤を描いた痛ましい物語です。しかし、このどろどろの物語を包み込む音楽のなんと素敵なことでしょう。だからオペラはやめられません。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。