クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第194回 ショパン『レ・シルフィード』
イラスト/なめきみほ
ショパンの音楽をバレエ化するという夢の実現
今日3月12日は、ロマンティックバレエ『ラ・シルフィード』の初演日です。
1832年にフランスで初演されたこの作品はセンセーションを巻き起こし、シルフィードを演じたマリー・タリオーニ(1804~84)にとって、『ジゼル』『白鳥の湖』とともに「3大バレエ・ブラン(白のバレエ)」の1つに数えられる当たり役となったのでした。
一方、ショパン(1810~49)作品を題材としたバレエ『レ・シルフィード』も見逃せません。紛らわしい名前を持つこちらは、ショパンが残した美しい音楽をバレエ化したいと願ったロシア出身のバレエダンサー、ミハイル・フォーキン(1880~1942)の注文に応じて、ショパンのピアノ曲がオーケストラ用に編曲された作品です。
1907年の初演以来、グラズノフやラヴェル、ストラヴィンスキーなど、錚々たる作曲家たちによって編曲が繰り返されてきましたが、現在ではイギリスの作曲家ロイ・ダグラス(1907~2015)の編曲作品を使うことが一般的になっているようです。
まさに、ショパンの美しい音楽に合わせて踊りたいと願ったフォーキンの思いが、そのまま形になったバレエ作品といえますね。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。