クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第198回 ヨハン・シュトラウス2世 オペレッタ『こうもり』
イラスト/なめきみほ
稀代の名歌手を世に送り出した名曲とは
今日3月16日は、ドイツのメゾソプラノ歌手、クリスタ・ルートヴィヒ(1928~2021)の誕生日です。
音楽家の両親のもとに生まれ、優れた声楽家として将来を嘱望されていたルートヴィヒは、1946年、ヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ『こうもり』のオルロフスキー公爵役でオペラデビューを果たします。
1955年には、ウィーン国立歌劇場の総監督カール・ベームに認められ、1962年には名誉ある“宮廷歌手"の称号を得るに至ります。その後の活躍は言わずもがな。世界最高峰のメゾソプラノ歌手として、数多くのステージと録音にその名を残す特別な存在でした。
彼女を世に送り出したオペレッタ『こうもり』は、“ワルツ王"ヨハン・シュトラウス2世の最高傑作。その価値は、それまでオペラと比べて軽く見られていたオペレッタの地位を高めるきっかけとなった名曲であることでしょう。
中でも、全体の聴かせどころを連ねた優雅な序曲は、「ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート」の定番曲として有名です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。