クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第208回 ベートーヴェン『交響曲第7番』
イラスト/なめきみほ
映像作品との相性抜群なベートーヴェン作品はこれ
今日3月26日は、ベートーヴェン(1770~1827)の命日です。
彼が残した9つの交響曲は、それぞれが独自の個性を持つことによって光を放ち、その全てが今もオーケストラの重要なレパートリーとなっていることがベートーヴェンの凄さといえます。
中でも人気の高い『第7番』の第2楽章は、初演の時から聴衆に大うけだったというのですから、美しい音楽の評価は不変です。この音楽について、リスト(1811~86)は「リズムの神化」、ワーグナー(1813~83)は「舞踏の聖化」とたたえた一方、クララ・シューマンの父ヴィーク(1785~1873)は、「ベートーヴェンが酔っ払った時に作曲したのではないだろうか」と語っていることからも、時代を超越した斬新な音楽であったことが想像できます。
優雅なメロディは、映像との相性も抜群。2009年の映画『ノウイング』や2010年の『英国王のスピーチ』などに使われたことでも有名です。一方、華やかな第1楽章は、テレビドラマ『のだめカンタービレ』のオープニングに使用されて一躍人気曲となったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。さてさて、草葉の陰のベートーヴェンの思いやいかに。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。