クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第210回 ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』
イラスト/なめきみほ
ラフマニノフが世界に羽ばたくきっかけの曲
今日3月28日は、ロシアの作曲家ラフマニノフ(1873~1943)の命日です。
演奏旅行中に病で倒れたラフマニノフは、担ぎ込まれたロサンゼルスの病院において、死が間近に迫っていることを認識。“世紀のピアニスト”として活躍した自らの手を見つめながら「私の愛しい手よ、さようなら。私の哀れな手よ……」とつぶやいたのだそうです。
その約1か月後にビバリーヒルズの自宅でこの世を去った彼の遺体は、ニューヨーク州ヴァルハラのケンシコ墓地に埋葬され、今も静かに眠っています。
そのラフマニノフの最高傑作にして、彼の名を世に知らしめるきっかけとなった作品が『ピアノ協奏曲第2番』です。作曲の背景には、『交響曲第1番』の手痛い失敗によって極度の神経衰弱に陥ったラフマニノフを、暗示療法によって立ち直らせたダール博士の存在があります。
初演は1901年10月27日、ラフマニノフ自身のピアノによってモスクワで披露され、彼を救ったダール博士に献呈されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。