クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第213回 J・S・バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』
イラスト/なめきみほ
“音楽の父”が残した不滅のメロディ
今日3月31日は、J・S・バッハ(1685~1750)の誕生日です。
ドイツ中部の町アイゼナハに生まれたバッハは、65歳で亡くなるまでドイツ中心部の街を転々としながら音楽家としての活動を展開します。当時の音楽家は宮廷や教会に雇われ、宮廷で行われる行事や教会の礼拝で演奏するための曲を作曲することが主な仕事だったのです。
バッハは18歳でアルンシュタット新教会のオルガニストとなり、その後ヴァイマールの宮廷オルガニストを経て、ケーテンの宮廷楽長、ライプツィヒの聖トーマス教会カントルといった役職を歴任しつつ名作を生み出します。
バッハの死後、その作品は長い間顧みられませんでしたが、メンデルスゾーン(1809~47)による『マタイ受難曲』の復活上演をきっかけに「バッハに帰れ」といった時代に突入。以来バッハは、西洋音楽の最高峰に位置する存在とされています。
その彼の誕生日に際しては、作品の中心を成す200曲の「教会カンタータ」の中から、単独で演奏されることの多いコラール『主よ、人の望みの喜びよ』をセレクトしたいと思います。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。