5月27日まで国立新美術館で開催されている「マティス 自由なフォルム」展。マティスが後半生に取り組んだ「切り紙絵」の作品を中心に、これまでとは異なる視点で紹介される、とてもユニークで貴重な展覧会です。大きなサイズの作品や大掛かりな展示も圧巻。作品の見どころを、美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します。
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第1回 《ブルー・ヌード IV》「マティス 自由なフォルム」
文/今津京子(美術展プロデューサー)
色彩の魔術師——20世紀を代表するアーティスト、アンリ・マティス(1869~1954)はしばしばこのように形容されます。生涯を通じて、特に「色」と「線」の関係について探求した芸術家でした。油彩、彫刻、デッサンなど様々な技法で試行錯誤を重ねますが、後半生に創り出したのが「切り紙絵」でした。
「マティス 自由なフォルム」国立新美術館 2024年 展示風景(プレス内覧会にて) © Succession H. Matisse ©読売新聞社
切り紙絵は、紙というフラジャイルな素材を使います。展覧会を企画する側からしますと、紙の作品は輸送や展示に注意が必要で、借用することが容易ではありません。したがってこれまでのマティス展では、彼の油彩の変遷を中心に紹介することはあっても、 切り紙絵をまとめて紹介することがなかなかできませんでした。本展は、その切り紙絵に焦点を当てた希少な機会。そしてマティスが最終的にどのような空間造形の世界に到達したのかを紹介する展覧会です。色と光に溢れたマティスをお楽しみください。
アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵 103×74cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
《ブルー・ヌード》は切り紙絵の代表的作品のひとつで、4つのバージョンがあります。それぞれに番号がついていますが、ニース市マティス美術館の作品は第4番。最後に完成した作品だから4番なのですが、実は最初に着手した作品でもあります。よく見ると紙の重なりが多く、またデッサンの書き直しの跡がたくさんありますが、それはこの作品だけ。マティスが試行錯誤を重ねた過程が見える、そしてそこには時間が詰まっているともいえる貴重な作品なのです。
マティス 自由なフォルム国立新美術館 企画展示室 2E(東京都港区六本木7-22-2)
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
開館時間:10時~18時 ※毎週金・土曜日は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日 ※4月30日は開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般2200円ほか
展覧会ホームページ:
https://matisse2024.jp 今津京子/Kyoko Imazu 撮影/小野裕次
美術展プロデューサー。パリをベースに、今回の「マティス 自由なフォルム」、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。
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