体内のグルタミンづくりにも軽い運動は必要不可欠
もう1つ、手術前後には無理のない軽い運動(有酸素運動)を患者さんに続けてもらっています。手足の活動性低下を防ぐためだけでなく、運動することで筋肉細胞のミトコンドリア機能を高め、効率よくBCAAから筋肉を作ったり、筋肉を分解してBCAAからグルタミンとアラニンを作ったりするためです。
アラニンは肝機能を高め、全身のエネルギー代謝を促し、手術に耐える体力をつけます。この2つの成分のおかげで術後の創傷治癒を含めた回復力が強まり、その後の健康維持にも役立つという相乗効果が、軽い運動を続けることで得られるというわけです。
このようにグルタミン・BCAA・善玉菌(生きて腸まで届く乳酸菌とビフィズス菌)がタッグを組んだ、腸内環境改善の取り組みを続ける中、我々の医局でいちばん喜んだのは移植チームの面々でした。
肝臓の移植手術に使われる免疫抑制剤の量を抑えられ、患者さんの苦痛を和らげることができたのです。ウイルスや細菌の侵入を防ぐ免疫機能を極度に弱めることなく“治る力”を保てるので、今まで1~2か月は患者さんのベッドサイドにつききりでしたが、今は1~2週間で心配な症状がなくなり、医局のモットー“早く元気で素敵な笑顔”を分かち合えるのですから。改めて「腸能力」はすごいと実感しています。
(3)へ続く>> 取材・文/宇津木理恵子 撮影/八田政玄
「家庭画報」2018年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。