藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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3月の花「バイモユリ」
自宅から摘んできたバイモユリと、同時期に出回るスズランを合わせたブーケ。この組み合わせは私のお気に入りの一つです。ほかにスペアミント、ロータス‘コットンキャンディ’、ユーカリを加えて春のフレッシュな贈り花に。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「フルール トレモロ」オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com @fleurstremolo 自宅の庭に咲くバイモユリ約500本を使っています!
バイモユリはフリチラリアの仲間で、秋に植えて春に開花する球根植物です。漢字にすると貝母百合。球根(鱗茎〈りんけい〉)が貝を2枚合わせたような形をしていることが名前の由来です。江戸時代に中国から渡来したといわれますが、茶花としても人気があり、古くから親しまれてきた花です。
繊細で流れるような草姿や、ベル型の花をうつむきがちに咲かせるさまに風情があり、私も大好きな花です。にもかかわらず、私の店ではこの花を仕入れることがあまりなく……。じつは、この時期、自宅の庭にバイモユリがたくさん咲くのです!
15年ほど前に両親が植えた10球くらいの球根が、植えっぱなしで毎年増え続け、現在では畳2枚分くらいの群生に。夏には木陰になり、土壌の湿度もほどほどにある環境を気に入ったのだと思います。
自宅の庭から摘んできたバイモユリを花器に挿して。摘みはじめは草丈が低めですが、徐々に高くなっていきます。
3月上旬から、週に一度、1回に100本くらい摘み、それが1カ月くらい続くので、合計で500本くらいは摘んでいる計算になります。どこかに出荷しようかと思うくらいの収穫量です。しかも、咲きはじめが早いので、市場に出回る前からバイモユリを贈り花に利用できます。早いうちに摘むので、市場に出るものより茎がやわらかく、しなやかなので容易に丸めることができます。茎も葉も、そして花もやわらかな淡緑色なので、アレンジやブーケにくるっと丸めるようにこの花を加えると、ぐっとナチュラルな雰囲気に仕上がります。
環境さえ適していれば、手間をかけなくても栽培できるので、もしご自宅にスペースがあるようでしたら、ぜひ今年の秋にバイモユリの球根を植えてみてください。贈り花に、また室内に飾る花に利用して、楚々とした花や趣のある草姿を愛でてみてはいかがでしょう。
バイモユリを使ったブーケ&アレンジメント
ブルーが好きな女性への贈り花に、染めのスイートピー‘アッシュブルー’とバイモユリを合わせたブーケを。チューリップ‘ダンスライン’、ガーベラ‘グリーンスパイク’、シレネ‘小布施の郷’と、バイモユリと同じ花色で揃え、ブルーを引き立てています。
同時期に出回るミモザも、よくバイモユリと一緒に利用します。バラのピンクとミモザの黄色の花色合わせのまとめ役をやわらかな緑色のバイモユリが担ってくれます。バラは‘コーラルハート’。ほかにリシアンサス‘アンバーダブルモヒート’、チューリップ‘ドリーマー’、スイートピー‘たきひめ’などを利用。
白いチューリップとバイモユリを合わせて春のウエディングブーケに。チューリップは‘ホワイトマーベル’と‘ホワイトマウンテン’の2種。ほかにラナンキュラス‘モルバン’、スカビオサ‘プチグリーン’を加え、アスチルベの‘ライピンク’をアクセントカラーに利用しています。
岡山の古民家カフェにオープン祝いのアレンジを。淡い緑色とピンクのクリスマスローズとバイモユリを合わせました。ほかにラナンキュラスの‘リナ ラムリア’と‘ポンポン シレンテ’、ローズマリー、レモンゼラニウム、ユーカリを使用。