クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第221回 ドニゼッティ オペラ『愛の妙薬』
イラスト/なめきみほ
ベルカント・オペラの楽しみがここにあり
今日4月8日は、イタリアのオペラ作曲家、ドニゼッティ(1797~1848)の命日です。
イタリアのベルガモに生まれたドニゼッティは、同時代を生きたロッシーニ(1792~1868)やベッリーニ(1801~35)とともに、“美しい歌”に満ちた「ベルカント・オペラ」を代表する作曲家です。
およそ50年の生涯で残したオペラは65曲。その特徴は、人間の声の魅力を効果的に引き出した印象的な“歌”にあります。
『ランメルモールのルチア』のような悲劇作品から、『愛の妙薬』『連隊の娘』といった喜劇作品の数々は、美しいアリアとともに今も世界中で上演されています。中でも、彼の代表作として名高い『愛の妙薬』が作曲されたのは1832年。ミラノ・カノビアーナ劇場からの急な依頼に応えて、わずか1か月で書き上げたというのですから驚きです。
有名なアリア「人知れぬ涙」などの美しいメロディがちりばめられたこのラブコメディは、オペラを初めて体験する方にもおすすめです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。