クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第223回 團 伊玖磨『祝典行進曲』
イラスト/なめきみほ
“世紀のご成婚”を祝した名曲とは
今日4月10日は、上皇上皇后両陛下のご成婚記念日です。
時は1959年(昭和34年)4月10日。当時の皇太子であった明仁親王(現・上皇)と正田美智子さま(現・上皇后)のご成婚は大きな話題となり、50万人を超える国民が沿道を埋めた“世紀のパレード”の華やかさは、今も語り草です。
この晴れやかなご成婚を祝して作曲された作品が、團 伊玖磨(1924~2001)の『祝典行進曲』でした。美しいメロディに彩られたこの曲は、まさに戦後日本を代表する行進曲。海外の軍楽隊等が日本においてコンサートを行う場合には、瀬戸口藤吉の『軍艦マーチ』とともに、必ず演奏される名曲です。
吹奏楽編成で書かれていることから、入学式や卒業式、体育祭などでも演奏される吹奏楽(ブラスバンド)の定番となっているこの曲は、1974年に作曲者自身の手によって管弦楽版の編曲もなされています。
ちなみに團 伊玖磨は、1993年に『新・祝典行進曲』も作曲しています。こちらは、当時の皇太子憲仁親王(今上天皇)と、小和田雅子さま(今上皇后)とのご成婚を祝した作品です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。