クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第228回 賛美歌320番『主よ、御許に近づかん』
イラスト/なめきみほ
タイタニック号の最期を包み込む名旋律
今日4月15日は、「タイタニック号」が沈没した日です。
イギリスの北アイルランドで建造された豪華客船「タイタニック号」は、処女航海中の1912年4月14日深夜、北大西洋上で氷山に激突。その損傷による浸水が原因で、翌15日未明に沈没してしまったのです。
犠牲者数は諸説ありますが、乗員乗客合わせて1513人(生存者は710人)。この、戦時中を除く20世紀最大の海難事故は、20本以上もの映画作品となって人々の心に記憶されてきました。
中でもジェームズ・キャメロン監督による1997年公開の映画『タイタニック』は、全世界での初動興行収入が18億4千万ドルという大ヒットを記録。史上初の「10億ドル超え作品」となったことは語り草です。
ジェームズ・ホーナーが手がけたすばらしいサウンド・トラックとともに注目したいのが、乗船していた弦楽四重奏が沈没直前まで演奏していた名曲です。沈みゆく船を背景に流れる賛美歌第320番『主よ、御許に近づかん』の厳かな響きは、映画をさらに印象的なものにしたのでした。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。