クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第229回 ブラームス『ハンガリー舞曲第5番』
イラスト/なめきみほ
チャップリンとブラームスの接点とは
今日、4月16日は、“喜劇王”チャールズ・チャップリン(1889~1977)の誕生日です。
そのチャップリンの代表作として知られる1940年公開の映画『独裁者』は、映画初の完全トーキー(有声映画)作品として歴史にその名を刻む名作です。
当時の独裁者ヒトラーを強烈に皮肉ったこの作品の中でも特に印象的なシーンが、床屋での髭剃りの場面でしょう。ブラームス(1833~97)の『ハンガリー舞曲第5番』をBGMに演じられるチャップリンの演技はおかしさの極み。何度見ても見飽きません。
『ハンガリー舞曲』は、ハンガリーのロマ音楽にもとづいてブラームスが編曲した21曲の舞曲集で、本来はピアノ連弾用に書かれた作品です。その人気はすばらしく、ブラームス自身が第1番、3番、10番を管弦楽用に編曲したほか、さまざまな作曲家たちによって21曲全てが管弦楽用に編曲されています。
中でも第5番の人気は高く、印象的な音楽にチャップリンが目をつけたことにも納得です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。