〔特集〕思い出の風景「小学校の桜」 3月の卒業式から4月の入学式にかけて、満開を迎える校庭の桜。わがふるさとや、昔の思い出を呼び起こす、懐かしく愛おしく、そして希望に満ちた風景へとご案内します。
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誰もが通る6年間の小学校生活。人生で最も感受性が豊かで、大きく成長するこの頃に校庭で見上げた桜の花には、皆、特別な思いがあることでしょう。わが子や孫の成長を喜んだ日の記憶も甦るかもしれません。
人の手で植えられ、守られ、そして子どもたちの成長を見守った令和5年の桜の物語をお届けします。
仙台市立遠見塚小学校【宮城県・仙台市】
桜のトンネルを歩く、笑顔も満開の母子。新1年生の荒 晴馬くんは「この小学校にはお兄ちゃんも通っているから通学が楽しみ」と話す。
入学式、桜のトンネルの向こうに
仙台市のほぼ中心部に建つ遠見塚小学校。開校から約60年の同校には、正門から校舎に向かう道の両側にソメイヨシノの桜並木が続きます。
その長さは70メートルとも80メートルともいわれ、新学年を迎える子どもたちを祝福するかのように、入学式の頃に満開に。両側からのびる枝先がつながるように咲き誇る様子から、県内では“桜のトンネル”と呼ばれ、親しまれています。
花びらごとぽとりと落ちる、トンネルの桜。新1年生の佐藤光莉ちゃんは「それは鳥がツンツンするからだよ」と教えてくれた。
髙橋信義校長によると、この桜並木の始まりは昭和42年。地区の住民が苗木15本を植えたことが端緒だとされています。それから、さらに本数が増えて現在の形に。
その間、校舎が建て替えられ、学校の近くには住宅が建ち並ぶようになり、周囲の雰囲気は変貌しましたが、桜並木だけは昔のまま。新1年生が真新しいランドセルを背負って桜のトンネルをくぐる初々しい光景は、半世紀前から今に受け継がれているのです。
祖父と父が通った小学校に4月から通う早坂千夏ちゃん。
「小学校の隣には公園として整備されている遠見塚古墳もあるので、このあたりは子どもたちのよい遊び場です」と教えてくれたのは、今春、新1年生になる早坂千夏ちゃんと一緒に桜のトンネルの下を歩いた母親の千穂さん。聞けばご主人と、そのお父様も同校の出身者。
「親子3代、同じ桜を見てきたと思うと守られているような気がします」。そう話す早坂さんの視線の先には、子どもたちの元気な笑顔がありました。
小学校のすぐ隣には市内最大規模の前方後円墳として知られる遠見塚古墳が広がる。緑に覆われた墳丘から段ボールでそり滑りをしたり、追いかけっこをしたり、桜並木同様、代々、地域の子どもたちの遊び場となってきた。
(次回へ続く。
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