今月の舞台人 上野水香さん
「昨年(2023年)は大きな節目の年になりました。ただ、生活パターンは変わっていませんし、今のところ体力や技術面の衰えも特に感じていません。実は今が一番いい状態かもしれないと、私は思っているんです。フレッシュな輝きがある若い頃とはまた違った、表現力やアーティストとしての器量といったものが増していると思うので」
そう話すのは、入団以来プリンシパルを務めてきた東京バレエ団の定年規定により、2023年から新たに同団のゲスト・プリンシパルとなった上野水香さん。2023年秋の紫綬褒章受章を記念して、このたび、大好評を得た『上野水香オン・ステージ』に再び挑みます。
感謝を込めて、心して踊ろうと思います
「昨年2月の公演は小品をちりばめたものだったんですが、今回はドラマをしっかり演じたくて、小品のほかに東京公演では『カルメン』を全編で、地方公演では『白鳥の湖』の第2幕を踊る予定です。バレエ団で踊る機会が減ったのが寂しくて、ここぞとばかりに踊るプログラムにしたので(笑)、相当見応えがあるものになりそうです」
振付家モーリス・ベジャール氏から最後に直接指導を受け、日本人女性として初めて踊ることを許された「ボレロ」も踊ります。
「東京バレエ団にいたからこそ何度も踊って深めてこられた『ボレロ』は、私の宝です。そもそも、一度きりだと思っていた『上野水香オン・ステージ』をまたやれること自体、私にとっては奇跡のような出来事なので、感謝を込めて、心して踊ろうと思います」
円熟の域にありつつも、変わらぬ愛らしさを持った上野さん。「踊りは自分を一番発揮できるもの。踊っている間はすべてを忘れて、自分の能力や魂を全部出しきっている感覚があります」と話す美しき表現者は、「自分が望む場所で踊れる間にスパッとやめたい」との思いから、一時は、2024年の春に引退することも考えたそうです。
「でも、思いがけず褒章をいただいて、もう少しやってみようと思ったんです。最初はただただ驚いて、(受章が)信じられなかったんですが、いろいろな方にお祝いの言葉をいただくうちに実感が湧いてきて、大勢の方に支えていただいたおかげで今があるのだな、もっとこの世界で頑張らなきゃいけないな、と。先のことはわかりませんが、体と心のコアな部分=軸を大切に、一つ一つの作品に全力で臨んでいくつもりです。今回の公演も、私のすべてを差し出して、観に来てよかったと思ってもらえるような舞台にしたいと思っています。ぜひお越しください」
ブラウス、パンツ/アドーア ネックレス、イヤーカフ、リング/ヒロタカ(Hirotaka 表参道ヒルズ)
上野水香(うえの・みずか)1977年、神奈川県生まれ。5歳でバレエを始める。モナコの名門ダンスアカデミーを首席で卒業後、牧阿佐美バレヱ団を経て、2004年に東京バレエ団にプリンシパルとして入団。2023年にゲスト・プリンシパルに就任。2022年にはプロデュースブランド「piuprima di mizuka」を立ち上げた。
創立60周年記念シリーズ4
上野水香、令和5年秋の褒章 紫綬褒章受章記念公演
東京バレエ団『上野水香オン・ステージ』
©松橋晶子
上野水香が東京バレエ団の仲間と再び届ける珠玉の舞台。東京では『カルメン』、「タイス」(『マ・パヴロワ』より)、『ドン・キホーテ』(抜粋)、「ボレロ」、浜松と横須賀では、ゲストに厚地康雄を迎え、『白鳥の湖』第2幕より、「Nocturne for Three」、「ボレロ」、『ドン・キホーテ』(抜粋)を予定。
2024年3月30日 アクトシティ浜松・大ホール
2024年3月31日 横須賀芸術劇場・大劇場
S席1万2000円(浜松・横須賀)ほか
NBSチケットセンター:03(3791)8888(月曜~金曜 10時~16時)
URL:
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/mizuka-ueno-tours/