〔特集〕思い出の風景「小学校の桜」 3月の卒業式から4月の入学式にかけて、満開を迎える校庭の桜。わがふるさとや、昔の思い出を呼び起こす、懐かしく愛おしく、そして希望に満ちた風景へとご案内します。
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誰もが通る6年間の小学校生活。人生で最も感受性が豊かで、大きく成長するこの頃に校庭で見上げた桜の花には、皆、特別な思いがあることでしょう。わが子や孫の成長を喜んだ日の記憶も甦るかもしれません。
人の手で植えられ、守られ、そして子どもたちの成長を見守った令和5年の桜の物語をお届けします。
越前市立味真野(あじまの)小学校【福井県・越前市】
校庭中央に立つ樹齢150年以上のエドヒガン。地域のシンボルとして、開花時には、卒業生や近隣住民もかつての学校生活を懐かしみながら花見に訪れる。新6年生は進級した4月に桜の前で卒業写真を撮影するのが伝統。
万葉の里に咲き誇る樹齢150年のエドヒガン
『万葉集』に詠まれた歌の舞台でもある味真野地区の小学校の校庭中央には、樹齢150年以上といわれる一本のエドヒガンが咲いています。
彼岸の頃に咲き、がく筒がつぼ形という特徴を持つエドヒガン。
朝もやの中、出勤前に立ち寄る人や散歩に訪れた人、グラウンドを走って遊ぶ園児の親子など、朝の日課のように地域の人が集うこの桜のまわりには、穏やかな時間が流れています。そんな春麗らかなのどかなひとときに居合わせるとどこか懐かしく、温かい心持ちになります。
開花時期は、夜間にライトアップ。平日の授業時間帯の見学は迷惑にならないよう配慮を。
地域の人々にとって拠り所ともいえる一本桜は、雪の重みで枝が折れたこともありました。約20年前に「さくらぶ」を立ち上げ、樹木医の指導の下、卒業生や住民がボランティアで手入れを行っています。かつては木に登ったりする児童もいましたが、現在は柵を設け、草を植え、根を踏まないよう保護。
桜を見ていると「わたしたちのベースキャンプである味真野の桜を守っていこう」という想いが伝わってきます。それぞれの思い出を胸に人々が集う桜。今春も爛漫に咲き誇ります。
新1年生の上城戸一翔くん。
桜の下で語らう三姉妹。左から橋本ゆうかちゃん、さつきちゃん、わかなちゃん。