5月27日まで国立新美術館で開催されている「マティス 自由なフォルム」展。“色彩の魔術師”と形容されるアンリ・マティス(1869〜1954)が後半生に取り組んだ「切り紙絵」の作品を中心に、これまでとは異なる視点で紹介される、とてもユニークで貴重な展覧会です。大きなサイズの作品や大掛かりな展示も圧巻。作品の見どころを、美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します。
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第14回 《聖ドミニクス》「マティス 自由なフォルム」
文/今津京子(美術展プロデューサー)
ヴァンスのロザリオ礼拝堂に入ると左手に、オルガンのパイプのように縦に伸びたステンドグラスが幾重にも連なっています。そして右手の壁は白。白いタイルの上には一筆書きとも言えるようなデッサン3点が大画面に描かれています。
祭壇側から礼拝堂の入口の方向を見た写真ですので、ステンドグラスは右側に見えます。会衆席の背後に描かれているのは《十字架の道行》。その過酷さを表現するため、マティスは敢えて荒々しい筆致で描いたといいます。©Succession H. Matisse 撮影/小野祐次
色と光に溢れるステンドグラスの壁と、白地に黒のデッサンを配した壁は鮮やかな対比をなすのです。「色」と「線」の関係を探求してきたマティスの集大成となったのでした。
アンリ・マティス《聖ドミニクス》1949年 筆と墨/紙 310×134.5cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
《聖ドミニクス》は祭壇の背後の壁にあります。単純なように見えますが、マティスが試行錯誤を重ねたもので、静かな瞑想を思わせる性質を帯びています。
マティスの初めての展覧会が日本で開催されたのは1951年。マティス自身が自ら作品を選び、ポスターを作り、展覧会を監修したという、今考えると贅沢で画期的なものでした。この《聖ドミニクス》はその展覧会で展示され、70年以上を経て再来日しました。「マティス 自由なフォルム」展では、その1951年の展覧会にゆかりのあるデッサンやカタログが展示されたコーナーもあります。
マティス 自由なフォルム国立新美術館 企画展示室 2E(東京都港区六本木7-22-2)
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
開館時間:10時~18時 ※毎週金・土曜日は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日 ※4月30日は開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般2200円ほか
展覧会ホームページ:
https://matisse2024.jp 今津京子/Kyoko Imazu 撮影/小野裕次
美術展プロデューサー。パリをベースに、今回の「マティス 自由なフォルム」、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。
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