高橋さんと山本選手、島田選手、三宅選手で魅せる「Carmen」から「Flame to the Moth」への流れ。ゲネプロより。千秋楽では友野選手と山本選手とともに。
大会の点数にかかわらず、魅力的な若手スケーターに機会を与えたい
ーー演出を手がけてきたアイスショー『アイス エクスプロージョン』と今回の『滑走屋』は、それぞれどのような立ち位置のものですか?
D:『アイス エクスプロージョン』は、海外のスケーターと一緒にプロのパフォーマンスを見せる場。繊細な曲や表現も多いイメージです。ゆくゆくは、アイスダンスやペアといったカップル競技で魅了するエンターテインメントとして確立していけたら……と思っています。『滑走屋』は日本人だけ、しかも若いスケーターをキャスティングして作品を作り上げていく。どちらかといえば、カンパニーに近いですよね。いつか、大きく成長していってくれたら嬉しいです。
ーー『滑走屋』での収穫と課題があったらお聞かせください。
D:それはもう反省ばかりです(苦笑)。稽古の時間確保を含むスケジュール管理や、費用、体調管理……。今回初めて見えたこともたくさんあったので、初めの一歩と思って今後に活かしていきたいです。
ーー6月8日〜11日には横浜アリーナで総合エンターテインメント『氷艶』シリーズ、「十字星のキセキ」において主演を務められる予定ですが、今回の経験がさらに活きますね。D:『滑走屋』でも、『氷艶』、『LOVE ON THE FLOOR』などで得た収穫や課題を反映できた点が多々あったと感じているので、きっとこの先にも自然につながっていくんでしょうね。自分のパフォーマンスだけにではなく、全体の流れや演出には今まで以上に意識が向くのだろうと思います。
ーー『滑走屋』第二弾、早くも期待大なのですが。初めて観たときより2回目、さらに3回目と回を重ねるごとに理解が深まり、その都度新たな発見もありました。再演してもまた違う味わいになる気がします。D:お客さんも喜んでくださったし、「今回はスケジュールが合わなかったけれど、次回は出たい」といってくれるスケーターもいるので、またやれたら! 疾走感や、曲の流れで一つのストーリーを作るといったフォーマットは確立できたのではないかと思うんです。いい演出、いいフォーマットができて作品として確立されていれば、再演するのもよし、新たなキャストで公演してみるのもよし。そしたら僕も、メインを張るのは体力的にキツくなるときが来たとしても、アンサンブルでなら出られるかもしれないし(笑)。この3日間だけで終わらせるにはもったいない気もしますし、幻の高志郎のプログラム(笑)もぜひ披露してほしいので、今後につながるよう柔軟に育てていけたら嬉しいですね。
パスカーレ・カメレンゴ氏振り付けによる新ナンバー「Flame to the Moth」で、会場の空気を一変させた高橋さん。その動きのすべてから1秒たりとも目が離せない。
達成感あふれる表情で「学びしかなかった」といいきる高橋さん。それは今回、“大輔塾”に参加したすべての若手スケーターたちにこそ、いえることなのかもしれません。この『滑走屋』は、今後のアイスショーのあり方に一石を投じる、記念碑的な作品になったのではないでしょうか。革新的なショーを今、このときに見せてもらえたことに感謝しつつ、今回とは全く異なる表現で登場するであろう高橋さんに、まずは『氷艶』で出会えることを楽しみにしています。
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小松庸子/Yoko Komatsu
フリー編集者・ライター。世界文化社在籍時は「家庭画報」読み物&特別テーマ班副編集長としてフィギュアスケート特集などを担当。フリー転身後もフィギュアスケートや将棋、俳優、体操などのジャンルで、人物アプローチの特集を企画、取材している。
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