クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第235回 ドビュッシー『子どもの領分』
イラスト/なめきみほ
愛娘を見つめるドビュッシーの優しい眼差し
今日4月22日は、日本を代表する作曲家にしてシンセサイザー奏者、冨田 勲(1932~2016)の誕生日です。
新進作曲家として活躍していた富田は、1969年のモーグ・シンセサイザーとの出会いをきっかけに、クラシックの名曲に現代的な解釈を加えた編曲に取り組みます。そして、1974年に発表したアルバム『月の光(ドビュッシーによるメルヒェンの世界)』がビルボード・クラシカルチャートで1位を記録、続く『展覧会の絵』も1位となって世界的名声を獲得します。
記念すべき第1作『月の光』の冒頭に収められたドビュッシーの『子どもの領分』の第4曲「雪は踊っている」の幻想的な美しさは、半世紀後の今聴いても新鮮そのもの。冨田 勲の感性が際立ちます。
ドビュッシーが溺愛した愛娘“シュシュ”ことクロード・エマに捧げられた『子どもの領分』(全6曲)は、愛娘シュシュを見つめるドビュッシーの優しい眼差しが感じられる名曲揃いです。中でも、はらはらと舞い落ちる雪に埋まっていくような第4曲「雪は踊っている」の不思議な感覚は格別です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。