クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第237回 ハイドン オラトリオ『四季』
イラスト/なめきみほ
ハイドン晩年の大作オラトリオ『四季』への思い
今日4月24日は、古典派を代表する作曲家ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)のオラトリオ『四季』の初演日です。
オラトリオ『天地創造』を大成功させたハイドンは、70歳も間近の高齢にもかかわらず、衰えを知らぬ創作意欲によって、イギリスの詩人ジェームズ・トムソンの詩を台本とした4部からなる長大な叙情詩であるオラトリオ『四季』の作曲にとりかかります。
しかし、トムソンの詩をドイツ語に翻訳したスヴィーテン男爵との作品を巡る意見の相違によって創作は難航。さらには、高齢による体調の悪化も悪影響を及ぼし、作曲活動は思うように進みません。それにもめげず、残る力を振り絞り、ほぼ3年の歳月を費やして完成させたあたりが勤勉なハイドンならでは。
初演は1801年4月24日。ウィーンのメールマルクトにあるシュヴァルツェンベルク侯爵邸の大広間で、ハイドン自身の指揮で行われ、オーケストラと合唱団、合わせて180人以上が出演し、大成功を収めたと伝えられます。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。