クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第239回 チャイコフスキー 幻想序曲『ロメオとジュリエット』
イラスト/なめきみほ
クラシック界にも大きな影響を与えたシェイクスピアの名作とは
今日4月26日は、イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)の洗礼日です。
彼が残した膨大な作品の中でも、一際人気の高い作品が『ロメオとジュリエット』でしょう。クラシック史上に残る多くの作曲家たちが、この作品の音楽化を試みていることからも、その人気ぶりが窺えます。
オペラにおいては、グノーとベッリーニが手がけているほか、プロコフィエフのバレエ作品も有名です。さらには、バーンスタインのミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の原作も同作なのですから、まさに時を超えて愛され続けてきた大ヒット作といえそうです。
ロシアを代表する作曲家チャイコフスキー(1840~93)も、この名作の恩恵にあずかった1人。1870年3月に初演された幻想序曲『ロメオとジュリエット』は、チャイコフスキー最初の成功作といわれる名作です。永遠不滅の悲劇を音楽のみで表現することに挑んだチャイコフスキーに拍手喝采。目をつぶって音楽に耳を傾ければ、悲劇の舞台となったイタリアのヴェローナにタイムスリップできそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。