クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第241回 メシアン『トゥーランガリラ交響曲』
イラスト/なめきみほ
メシアンの名を世に知らしめた代表作
今日4月28日は、フランス近代の作曲家・オルガン奏者・教育者として名高いオリヴィエ・メシアン(1908~92)の命日です。
20世紀の現代音楽界を牽引したメシアンの代表作にして、最初の大規模な管弦楽曲として知られる『トゥーランガリラ交響曲』の初演は、1949年12月2日ボストンのシンフォニーホールで、レナード・バーンスタイン指揮、ボストン交響楽団の演奏によって行われ、大成功を収めています。
この名作誕生の背景には、当時ボストン交響楽団の音楽監督を務めていたセルゲイ・クーセヴィツキー(1874~1951)の存在があります。彼が亡き妻の追憶のために設立した「クーセヴィツキー財団」では、毎年同時代の優れた作曲家に管弦楽作品を委嘱していたのです。
この試みの中から、バルトークの『管弦楽のための協奏曲』や、マルティヌーの『交響曲第1番』に、ミヨーの『交響曲第2番』のほか、ストラヴィンスキーの『頌歌』などが誕生しているのですからすばらしい。「クーセヴィツキーがいなければ20世紀の音楽界は今とは違う形になっていた」といわれるゆえんです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。