〔特集〕私の最高レストラン 人生の節目で食した忘れられないあの味、大切な人と過ごしたあの名店でのひととき。今回、さまざまな分野で活躍される方々に「あなたの“最高”のレストランは?」という質問をしました。それぞれの「食」にまつわる思い出を辿っていくうちに見えてきたのは、かけがえのない「人生の物語」でした。
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中井貴一さん(俳優)
「皆で楽しく、おいしいものを食べる。そのために働いています」
町家の風情を残す「中国饗膳 粋廉」のカウンターででき上がりを待つ中井さん。食の好みの合う友人に誘われ、訪ねたのが始まり。
中井貴一さん(なかい・きいち)1981年映画『連合艦隊』でデビュー。テレビ、映画、舞台などで活躍し、現代劇、時代劇の両方に欠かせない正統派。2020年紫綬褒章受章。映画『大河への道』(2022年)で第32回日本映画批評家大賞の主演男優賞を受賞。2024年7月には朗読劇『終わった人』を再演予定。
中国饗膳 粋廉(京都・二条城)
「ふかひれを食べたくなったら、ここ」── 中井 貴一さん
仕事で京都滞在が多い中井貴一さんが、「僕と同じように食への熱意があって、おいしいと思ってくれそうな人」と訪れるお店が「中国饗膳 粋廉」です。
ふかひれあんかけご飯のセット3300円。奥は春巻きとスープ、お新香。ほかに前菜3種とデザートがつく。
「ふかひれは基本的に高級な食べ物なので率先して選ぶことがあまりなかったのですが、こちらのものをいただいてプライオリティがポーンと上がりました。ともすれば臭みがあるのに、処理と味つけの仕方で全然それを感じさせないんです。醬油ベースの甘辛の味は、日本人で嫌いな人はいないのでは、と思うほど。粋廉さんを知ってからは、ふかひれといえば、こちらに伺いたくなるんです」。
お互いの人柄にも惹かれ、「貴一さん」、「大将」と呼び合うお二人。玉ねぎソースを合わせるふかひれの姿煮も「ここでしか味わえない」と中井さん絶賛の一品。
あつあつの陶板で温めたご飯に、ご主人考案の風味豊かなふかひれあんがたっぷりかかる。昼はラーメンや姿煮のセットも楽しめる。
ご主人の大野義行さんが丁寧に仕込む白湯(パイタン)と3種類のオイスターソースベースで煮込んだふかひれは、ご飯にもラーメンにも合う濃厚で上品な味わい。明るく気遣いされる奥様の加寿子さんとともに店を営み、19年この味を守り続けています。
「最近は、“今、食べたいもの”をいただく瞬間がどんな高価なものを食べているときより幸せだと思うんです。楽しく食事をすることに時間もお金も使いたいし、そのために働いています」と、粋に年齢を重ねる中井さん。
中国饗膳 粋廉住所:京都市中京区西ノ京職司町76
TEL:075(822)2888
営業時間:12時~13時15分、18時~19時30分(ともにLO)
定休日:月曜、火曜(祝日の場合は翌日)
料金:昼のランチセット2420円~
※要予約
【中井貴一さんの“京都ご飯”】
大好物の肉のスペシャリテや懐かしい味のカレーを目当てに通う、京都の行きつけ2軒も教えていただきました。
喫茶チロル
「卵を混ぜながらいただくカレーは、奥深くて懐かしい味」中井さんが京都でカレーを食べたくなったら決まって訪れるという、1968年創業の喫茶店。淡路島産の玉ねぎの甘みと国産牛のうまみが溶け込んだ、ピリッと辛い、万人に愛されるカレーです。
「スパイスカレーでもインドカレーでもなく、具がいっぱいの家庭のカレーとも違う。懐かしい味で、いつも生卵入りをいただきます」。
店内には昔の二条城や中井さんのお母様が育った旧堀川通の写真が飾られ、そんなレトロな空間で味わうのも楽しみの一つにされています。
住所:京都市中京区門前町539-3
TEL:075(821)3031
営業時間:8時~16時
定休日:日曜・祝日
料金:カレー(生卵入り)880円
牛・キムラ
「京都に来たらまずはお肉。唯一無二の絶品鍋です」共演者やスタッフを連れて30年近く通う中井さんのお気に入りは、牛肉と水菜のはりはり鍋。
本店である精肉店で目利きされた国産牛のロースやランプを用い、すき焼きの割りしたと昆布だしを合わせたオリジナルだしの中でしゃぶしゃぶのように火を通し、たっぷりの京水菜とともに卵につけていただきます。
「肉派の僕が京都で肉といったらこちら。にんにくを必ず入れてもらっていて、とにかくおいしい。明日も頑張ろうという気持ちになります」。
住所:京都市下京区大宮通高辻下ル高辻大宮町110-7 宇田ビル2、3階
TEL:075(823)2229
営業時間:17時30分~21時30分、日曜・祝日~21時(ともにLO)
定休日:木曜
料金:「特選牛はりはり鍋」はコース7700円~、単品1人6380円
※要予約
(次回に続く。
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