〔特集〕20世紀&21世紀にグルマンを魅了 世界のスーパーシェフ列伝 美食は時代を映す鏡──。フランス料理を起点に、卓越した才能で各時代を牽引したスーパーシェフたちの功績と美食界の進化を辿る旅へとご案内します。
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【2000年代〜】
フェラン・アドリア
写真/elBullifoundation © F. Guillamet
圧倒的な才能が世界各地をガストロノミーの発信地に1990年代後半、美食界に新たな旋風を巻き起こす才能が世界の注目の的となりました。スペイン「エル・ブジ」のフェラン・アドリアです。冬季は店を閉めて料理の研究に勤しみ、新しい調理法を用いた多くの皿数で構成するコースなど、その革新的なクリエイションは、イノベーティブな料理の先駆けとなりました。
調理器具やテクニックのさらなる向上により精密な料理が作られるようになると、料理がアートとしてとらえられるように。加えてただおいしいだけのものではなく、メッセージやストーリーを伝える媒体として、世の中にどのような提案をするかについても、注目されるようになりました。
例えば地元の風土の特色を表現し、美食の地として北欧に光を当てたレネ・レゼピ。失われつつある自国の生物多様性を守る発信を続けるペルーのヴィルヒリオ・マルティネスなど、新たな価値観のもとでの美食が世界各地で生み出されています。
アルギン酸ナトリウムで球形にしたメロンのゼリー「球形のメロンキャビア」。 写真/ elBullifoundation © F. Guillamet
雪から芽を出した植物から着想した「解凍」はシェフらしい情緒的な表現の一品。 写真/ elBullifoundation © F. Guillamet
〔2000年代以降日本では?〕
アラン・デュカス(2004年)、ピエール・ガニェール(2005年)、ミッシェル・トロワグロ(2006年)と世界の名だたるシェフが自らの名を冠した高級店を出店。2007年には『ミシュランガイド』が日本上陸。世界で最も多くの星が輝く日本は、世界最高峰の美食を誇る国に。
世界の料理人が瞠目した画期的なプレゼンテーションフェラン・アドリア(1962~)21世紀の幕開けはやはりスペイン、フェラン・アドリアの「エル・ブジ」なくしては語れないだろう。科学者と共同で料理を分解し、再構築する手法は「エル・ブジ」の代名詞。世界中に普及した「エスプーマ(液体に亜酸化窒素を混ぜて泡状にする機械)」を開発し、伝統料理を新しい食感や温度感で革新した。緻密で繊細な技術だけでなく、日本料理の情緒的な表現に感銘を受けた盛りつけなどで「感情を動かす」料理を生み出した。
【主な弟子】
アルベルト・アドリア(スペイン「エニグマ」)、レネ・レゼピ(デンマーク「ノーマ」)
【師匠の横顔】オリオール・カストロさん、エドゥワルド・シャトルックさん、マテオ・カサーニャスさん(スペイン「ディスフルタール」シェフ)私たちは「エル・ブジ」の研究開発チームとして働き、その後仕事をまとめた事典『ブジペディア』の編纂にかかわりました。革新者として知られていますが、同時に歴史に大きな敬意を払い、その流れの中で次世代に知識や文化をいかに継承するかにも興味を持っている方です。
(次回に続く。
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