クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第251回 ヘンデル『ハープシコード組曲』
イラスト/なめきみほ
ジャズとクラシックの二刀流が手がけた稀有な名盤
今日5月8日は、ジャズピアニスト、キース・ジャレット(1945~)の誕生日です。
彼の個性は、ジャズとクラシックの世界を自在に行き来する二刀流であること。しかも、作品に応じてピアノとチェンバロを弾き分けるセンスとその力量は、クラシックのコア層をも納得させるほどの腕前です。
その実績は素晴らしく、過去に発表されたソロアルバムだけを列挙してみても、J・S・バッハの『平均律クラヴィーア曲集(全2巻)』を筆頭に、『ゴルトベルク変奏曲』、『フランス組曲』に、ショスタコーヴィチの『24のプレリュードとフーガ』。そして近年では、録音したままお蔵入りとなっていたC・P・Eバッハの『ヴュルテンベルク・ソナタ集』が発売になるなど、主戦場であるジャズ同様、クラシックの世界においても超一流の実績を残しているのですからさすがです。
中でも、ヘンデルの『ハープシコード組曲』の美しさはまさに破格。J・S・バッハの『平均律クラヴィーア曲集』に比肩するこの名曲の魅力を体験するための、最高の1枚といえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。