クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第253回 ドヴォルザーク『我が母の教え給えし歌』
イラスト/なめきみほ
母への感謝が込められた音楽とは
今日5月10日は、「母の日」の始まりの日です。
その由来は、1907年5月に、アメリカ・フィラデルフィアの教会で、アンナ・ジャービスという女性が亡き母を追悼したいという思いから、教会の参列者に白いカーネーションを配ったことだとされています。その行為に感動した人々が、母親を忘れない日の大切さを認識。翌1908年5月10日に、同教会で初めて「母の日」を祝ったことが始まりだとされています。
その後、1914年にアメリカの議会が5月の第2日曜日を「母の日」に制定。それをきっかけに、母への感謝を表す「母の日」は世界中に広まったのです。
クラシック音楽の世界で“母をイメージした作品”といえば、チェコの作曲家ドヴォルザーク(1841~1904)の歌曲集『ジプシーの歌』の第4曲『我が母の教え給えし歌』が有名です。哀愁に満ちたこの歌曲の内容は、「母が歌いながら昔を思い出して涙を浮かべていたことを、今自分の子どもに歌ってやりながら思い出す」というもの。今も昔も、人が母を思う気持ちは変わらないようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。