クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第256回 グノー オペラ『ロメオとジュリエット』
イラスト/なめきみほ
決闘シーンが際立つ名作オペラ
今日5月13日は、1612年に、宮本武蔵と佐々木小次郎が「巌流島の決闘」を行った日です。
このあまりにも有名な決闘は、江戸時代から伝わる歌舞伎や浄瑠璃、講談などの題材にされてきたほか、吉川英治が1930年代に朝日新聞に連載した小説『宮本武蔵』によって広く親しまれるようになった伝説的な戦いです。
決闘シーンが好んで描かれるのはオペラの世界でも同様。有名なところでは、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』や、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』、ヴェルディの『運命の力』、ワーグナーの『ローエングリン』などの決闘シーンが、物語の軸として印象的に描かれています。
中でもシェイクスピアの悲劇『ロメオとジュリエット』を題材としたグノー(1818~93)の同名のオペラにおける決闘シーンの美しさと儚さはまさに破格。この名高い戯曲は、プロコフィエフによる同名のバレエのほか、時代背景を1950年代のニューヨークに設定したミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』などにも流用されている永遠不滅の悲劇です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。