クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第262回 サン=サーンス『交響曲第3番“オルガン付き”』
イラスト/なめきみほ
才能豊かなサン=サーンスの全部乗せ!
今日5月19日は、サン=サーンス(1835~1921)の『交響曲第3番“オルガン付き”』の初演日です。
ロンドン・フィルハーモニー協会からの委嘱によって作曲されたこの曲は、フランス近代を代表する作曲家サン=サーンスの番号付きの交響曲としては3番目の作品にして、極めつきの自信作です。なにしろ本人が「私の持てる力をすべて注ぎ込んだ」と豪語しているのですから間違いありません。
幼少期から音楽の才能を発揮し、「天才少年」とたたえられた才能あふれるサン=サーンスの“全部乗せ”といった趣の音楽はインパクト抜群。初演は大成功を収め、作曲者サン=サーンスは、“フランスのベートーヴェン”と評されています。なにより重厚なオーケストラにオルガンの壮麗な響きを加えた“音の洪水”に身を浸す快感は格別。まさにお腹がいっぱいになる音楽の筆頭です。
初演は1886年5月19日。サン=サーンス自身の指揮によって、ロンドンのセント・ジェームズホールで行われ、作品は、初演直後にこの世を去ったフランツ・リストに献呈されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。