クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第265回 ヴェルディ『レクイエム』
イラスト/なめきみほ
敬愛する文豪の死を悼んだ劇的なレクイエム
今日5月22日は、イタリアのオペラ作曲家ヴェルディ(1813~1901)の『レクイエム』初演日です。
敬愛するイタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニ(1785~1873)の死を深く悲しんだヴェルディが、マンゾーニ追悼のために作曲を思い立ったこの曲は、マンゾーニの死の1周忌である1874年5月22日、ミラノのサンマルコ教会において、ヴェルディ自身の指揮によって初演されています。
当時の批評家からは「レクイエムにしてはあまりにオペラ的だ」、「劇的すぎる」といった批判が相次いだにもかかわらず、この作品に自信を持っていたヴェルディは、最大の理解者である妻の励ましや、大作曲家ブラームスからの称賛の声を励みにヨーロッパ各地で演奏を継続します。
その結果、今ではモーツァルト、フォーレの作品と並ぶ「3大レクイエム」のひとつに数えられる名作となったのです。名高い「怒りの日」のメロディは、映画『テルマエ・ロマエ』などでもおなじみの劇的な音楽です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。