クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第270回 パガニーニ『ヴァイオリン協奏曲第2番』
イラスト/なめきみほ
悪魔に魂を売ったと噂された名手とは
今日5月27日は、19世紀を代表するヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ニコロ・パガニーニ(1782~1840)の命日です。
その技術のあまりの凄さゆえに“悪魔に魂を売った”という噂が流れ、演奏会では普通の人間のように足があることを確認しようとする人までいたというのですからびっくり。目付きが鋭く、病弱で痩せていて肌が浅黒かったことも、パガニーニの悪魔伝説に拍車をかけたのかもしれません。
若きリスト(1811~86)は彼の演奏を聴いて、「自分はピアノのパガニーニになる」と発言したことも語り草。そのリストの代表作として知られる『ラ・カンパネッラ』を生み出すきっかけとなった作品が、パガニーニの『ヴァイオリン協奏曲第2番』〔通称ラ・カンパネッラ(鐘)〕でした。
この曲の終楽章を変奏曲形式によるピアノ曲に編曲したリストは、その後『ラ・カンパネッラ』を含む『パガニーニによる大練習曲』の完成に至ります。一方作品の模倣を極端に嫌ったパガニーニは、死の直前にほとんどの楽譜を焼いてしまいます。このあたりにも悪魔の片鱗が見え隠れするようですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。