クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第272回 コルンゴルト『ヴァイオリン協奏曲』
イラスト/なめきみほ
時代に翻弄された作曲家が思いを込めた協奏曲
今日5月29日は、エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897~1957)の誕生日です。
現在のチェコのブルノに生まれたユダヤ系作曲家コルンゴルトは、“モーツァルトの再来”と呼ばれるほどの神童でした。その才能は、R・シュトラウスやプッチーニも絶賛。21歳の時にはオペラ『死の都』を大ヒットさせ、オペラ作曲家としてのゆるぎない地位を確立します。
しかし、第二次世界大戦におけるナチスドイツの台頭から逃れるため、1934年にアメリカのハリウッドに移住して映画音楽の世界に身を委ねます。そこで手がけた壮大な作品の数々はハリウッド映画の発展に大きく貢献。映画『スター・ウォーズ』で名高いジョン・ウィリアムズも、彼の影響を受けたことを認めています。
そのコルンゴルトが、戦後クラシック音楽界に復帰するために手がけた『ヴァイオリン協奏曲』は、20世紀有数のヴァイオリン協奏曲としてヴァイオリニストがこぞって演奏する名曲です。初演は1947年2月15日、この作品を愛した名手ハイフェッツのヴァイオリン独奏によって行われています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。