〔特集〕「京都」美味案内(1)京料理、世界に羽ばたく 日本食文化の継承と発展、世界に向けた発信のため活動する「日本料理アカデミー」。2024年2月、海外の若手シェフを日本に招聘、日本の食文化を体感してもらうとともに次代を担う京都の料亭の若主人と交流する「日本料理フェローシップ」を開催しました。そこで得たものをもとに料亭の若主人が表現した4皿の“新・日本料理”です。
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【萬亀楼】(西陣)
あなごときゅうりの酢の物
料理の構成要素は、二杯酢ときゅうりのすりおろし、豆腐のピュレ、塩を当てたきゅうり、たれ焼きにした伝助あなご、穂じそ。
「日本料理の国境線は今どこにあるのか。視覚的に国境を越え、食べると日本に戻るという料理をイメージしました」と若主人の小西雄大(たけひろ)さん。
フランス料理的な盛りつけでありながら、口にしたときの味は酢の物そのもの。ひと皿で満足感を得られる料理を作る海外のシェフの考えに着想を得て、豆腐をソースの代わりに加えました。
有職料理の伝統を今に受け継ぐ
有職料理のコースで出される雅やかな「台の物」。
御所で節会に供される有職料理の伝統を守るとともに、食材に手を触れずに吉祥の形に切り分ける生間(いかま)流式庖丁を受け継ぐ料亭「萬亀楼」。
10代目当主であり、生間流三十代家元を継承する小西将清(まさきよ)さんと、東京「柿傳」で修業後、生家に戻って13年になる小西雄大(たけひろ)さんが暖簾を守ります。
10代目将清さんと11代目雄大さん。
有職料理の様式と現代の京料理を融合したコースで八寸代わりに出されるのが、三本雲脚の嶋台を用いた「台の物」。初夏には菖蒲の花が生けられ、粽(ちまき)寿司、鰻の八幡巻きなどが雅やかに盛られます。
京都で代々続く料亭のおもてなしにはあらゆるところに茶の湯の心が息づいています。料理は茶事で出される懐石を範とし、旬の食材を使い、温度やタイミングに細心の気を配り、供されます。食事の締めくくりには主菓子と薄茶一服が出され、茶事の亭主さながらの心配りが感じとれます。「萬亀楼」では、初夏には手作りの紫陽花きんとんと薄茶が食後に出される。添えられた黒文字は、当代主人が自ら削ったもの。
「日本料理は神事を起源とする料理で、神様のお下がりをいただくという精神性を持つものです。昨今もてはやされる強いおいしさの日本料理から離れて、穏やかな味わいの日本料理を追求していきたい」と雄大さんは話します。
風格ある店構え。西陣の旦那衆にも愛され続ける名料亭。
萬亀楼住所:京都市上京区猪熊通出水上ル蛭子町387
TEL:075(441)5020
営業時間:12時~13時、17時30分~19時(ともにLO)
定休日:水曜、第1・第4火曜
料金:コース昼1万6500円~、夜2万7500円~
※要予約
(次回に続く。
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