〔特集〕「京都」美味案内(1)京料理、世界に羽ばたく 日本食文化の継承と発展、世界に向けた発信のため活動する「日本料理アカデミー」。2024年2月、海外の若手シェフを日本に招聘、日本の食文化を体感してもらうとともに次代を担う京都の料亭の若主人と交流する「日本料理フェローシップ」を開催しました。そこで得たものをもとに料亭の若主人が表現した4皿の“新・日本料理”です。
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【たん熊 北店】(西木屋町四条)
ヌーヴォー甘鯛
カリカリに焼いた皮を添える同店流の「甘鯛の塩焼き」を再構築。はちみつを加えた酒粕と卵白、山いもを合わせたソースとレモンピールを甘鯛の身にのせてふっくら焼き上げ、カリフラワーの塩蒸しと、うすいえんどう、抹茶、はちみつ、ピーナッツオイルのソースを添えています。
「交流した仏の3つ星シェフ、アレクサンドル・クイヨン氏はご自身で釣った魚をシンプルに調理して魅了する人。はちみつを多用する調味料使いも印象的でした」とは4代目の栗栖熊一(ゆういち)さん。シンプルが身上の定番に、新しい風を吹き込みました。
板前割烹を起源に親しみやすい京料理を
油目の葛たたきなどを盛り込んだ5月の椀物。
初代・栗栖熊三郎氏が高瀬川のほとりに「たん熊」の暖簾を掲げて96年。板前割烹の先駆けとして一目を置かれ、西洋のコロッケから着想を得たという「かも饅頭」や一人前で供す「丸鍋(すっぽん鍋)」など数々の看板料理を生み出しました。
多様で新鮮な“旬”の食材の持ち味、香りを数少ない調味料で引き出すのが日本料理の真骨頂。四季のはっきりした日本では、季節が移り変わるとともに、おいしくなる食材も変化していきます。初夏の京都の旬味といえば、海からは鱧、川からは鮎、野からは賀茂なすや万願寺とうがらしなどの京野菜。自然を尊び、味のみならず、食材そのものが持つ色や形を美しく表現するのも日本料理の特徴です。写真は「徳ㇵ本也」の初夏のお造り。富山・氷見に揚がった夏まぐろを藁で炙り、葉わさびとともに、アンティークのガラス器に涼やかに盛る。撮影/内藤貞保
「フェローシップで来日した外国人シェフたちが自由な発想のもとに料理を作る姿は、今までにないものを生み出した初代の心意気に重なる思いでした」と話すのは現当主の栗栖正博さん。今回のフェローシップを主催した日本料理アカデミーの理事長も務めています。
3代目の正博さんと4代目熊一さん。
「自店の料理や経営を受け継ぐだけでなく、日本料理や文化を正しく伝えることが、私の使命だと思っています」と頼もしく語る長男の熊一(ゆういち)さんとともに家業はもちろん、京料理界を志高く盛り上げます。
名物丸鍋の小暖簾も店先に掲げる。
たん熊 北店住所:京都市中京区西木屋町通四条上ル紙屋町355
TEL:075(221)6990
営業時間:12時~13時30分、17時30分~19時30分(ともにLO)
定休日:水曜、不定休あり
料金:コース昼8712円~、夜2万570円~
※要予約
(次回に続く。
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