更年期世代のお悩み解決 心が楽になる“幸せ習慣” 第6回 50代、60代になると急に現実味を帯びてくる親の介護。いずれ直面することと覚悟はしていても、時間的・身体的・精神的負担は想像以上で、大きなストレスを抱えてしまう人も。ご自身の経験も交え、幸福学の専門家・前野隆司先生とマドカさんご夫妻に、介護に“幸せ”を見出すコツを教わります。
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自分も親も“幸せな”介護を目指し、「3つのバランス」を心がけましょう
「親の介護がストレス。つい声を荒らげてしまい自己嫌悪に陥る」
前野隆司先生 まえの・たかし 日本の幸福学研究の先駆者。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。幸福学を世の中に役立つように応用し社会全体の幸せを目指す。
前野マドカさん まえの・まどか 夫の隆司氏とともに幸福学を研究。幸せな社会を目指す会社「EVOL」を経営。幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、研修活動、講演等を行う。
別れ際と電話を切るときは優しい言葉で締めくくる
親を介護中の多くの方々から、感情のコントロールが難しいとの声が聞かれます。マドカさん 本当にそう思います。「病気なのだから物忘れはしかたがない」と頭で理解していても「しっかり者だった母(父)が……」と思うと悲しくなるし、「どうしてできないの!」と怒りたくもなる──。私も当事者の一人として、自分と親の両方にとって幸せな介護って何だろうと考えながら日々過ごしています。
前野先生 親子の間ではどうしても感情的になりがちですが、認知症という病気や老化についての知識を持っておくことは冷静さを保つために役立つのではないかと思います。親の変わりようを理解できず混乱したり、感情を爆発させて疲れ果ててしまう状況が少しは減るかもしれません。
マドカさん “怒っちゃだめ”と抑えすぎるのも“また怒ってしまった”と後悔するのもストレスになります。私は、別れ際や電話を切るときは「温かくしてゆっくり休んでね」「風邪をひかないように気をつけてね」など、優しい言葉かけで締めくくるようにしています。たとえイライラして少しきつい言葉を発してしまったとしても、“終わりよければすべてよし”と割り切る。そのひと言で親も自分も安心できて、気持ちがリセットされて、穏やかな気持ちでよく眠れることが多いのです。
前野先生 寝る前にその日にあった「よいこと」を3つ書く習慣を1週間続けると幸福度が半年の間、高くなった、という研究があります(下グラフ)。ポジティブな部分に目を向けることの効果ですね。
「よいことを書く習慣」と幸福度の関係
Seligman,M.E.P.,&Others(2005).Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist,60,410 - 421.
「毎晩寝る前にその日にあったよいことを3つ書き出すエクササイズ」を1週間行い、実施の前後、およびその1週間から6か月後の幸福度の変化を調べた結果、半年にわたり幸福度が向上することがわかった。