サイレントキラーの病に備える 第6回(1)睡眠時無呼吸症候群は、肥満ぎみの男性に起こる病気だと思っていませんか。実は閉経や不眠症とも関連し、女性にも意外に多い病気と考えられています。この病気に詳しい睡眠総合ケアクリニック代々木 副院長で東京医科大学病院 兼任教授の中山秀章先生にその特徴や検査、治療について伺いました。
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“気づいたときには手遅れ”にならないように「睡眠時無呼吸症候群」
[お話を伺った方]
睡眠総合ケアクリニック代々木 副院長
東京医科大学病院 診療部門 睡眠学寄附講座 兼任教授
中山秀章(なかやま・ひであき)先生1990年新潟大学医学部卒業後、昭和大学と米国ウィスコンシン大学で学ぶ。2006年新潟大学医歯学総合病院助教、同第二内科講師を経て、13年東京医科大学病院呼吸器内科准教授、19年から現職。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本睡眠学会専門医、日本内科学会総合専門医・指導医。
有病者の脳卒中や狭心症・心筋梗塞の発症率は約8倍
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に繰り返し呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。治療の必要がある人の割合は「日本では4〜10人に1人と推定されています」と中山先生。患者は男性が多いのですが、年齢が上がるにつれて女性も増えていきます。
睡眠時無呼吸症候群になると睡眠が中断され、日中に眠い、熟睡した感じがしない、中途覚醒する、いびきがひどい、朝起きたときに頭痛があるといった症状があらわれることがあります。
また、体内は低酸素状態になり、さまざまな影響が出てきます。例えば、「重症の睡眠時無呼吸症候群の人は脳卒中や狭心症・心筋梗塞の発症率が健康な人の約8倍、死亡率が約4倍になるというデータが出ています」。ほかにも不整脈、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などのリスクが上がります。近年では、夜間頻尿や緑内障とも関連するという報告もあります。
もう一つ、見逃せないのがパートナーへの影響です。「大きないびきや無呼吸によってパートナーが睡眠障害になる割合は健康な人のパートナーの約3倍、疲れや日中の眠気は約2倍というデータがあります」。
睡眠時無呼吸症候群によって進行する病気・症状
●脳卒中
●狭心症・心筋梗塞
●不整脈
●高血圧
●脂質異常症
●糖尿病
●肥満
●夜間頻尿
●睡眠障害
肥満や閉経、気道の形状、深酒などがリスクになる
睡眠時無呼吸症候群は、口や鼻から喉までの空気の通り道(気道)が狭くなるのが原因の閉塞タイプと脳の呼吸を司る部分の機能障害による中枢タイプに大別され、両方が混合することもあります。睡眠時無呼吸症候群のほとんどは閉塞タイプです。
この閉塞性睡眠時無呼吸症候群になる原因の一つが肥満です。肥満になると喉まわりに脂肪がつき、気道が狭まります。
「あごの下が脂肪で膨らんでいる人は睡眠時無呼吸症候群になる傾向があります」。
扁桃が大きい人、仰向けで寝て寝返りが少なく、舌が奥へ落ち込む人、慢性的な鼻づまりのある人、口呼吸が癖になっている人、深酒する人も高リスクです。歯が抜けた後に顔の骨格が変化し、例えば、夜に総入れ歯をはずしたときに気道が狭くなってしまう場合もあります。
また、女性でも閉経後には無呼吸になりやすくなります。「女性ホルモンには妊娠中に胎児に影響しないよう睡眠時無呼吸症候群を回避する作用があると考えられています。そのため、閉経後には注意が必要です」。
(次回へ続く)
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